ミュージカル『タイタニック』
結局タイタニック一色になった3月下旬でした。
ストーリーも音楽も演出も全て素敵でした。
G.P.段階ではそうでもなかったんですが、本公演が始まってからはぐんぐん引き込まれたので、リピしがいがありました。回数を重ねるほど泣ける、そんな作品でした。
もちろん一回で魅力を堪能できる友人もいたので、あくまで個人的に、です。
あまりにハマったので1人ずつ感想書いていきます笑
ぴろしは1番最後なのでスクロール!
加藤和樹(アンドリュース)
主役らしくない主役。前半の見せ場はあまりないような感じがします。でもやっぱりこの話の中心は誰かというとアンドリュース以外考えられないのです。
生真面目で船のことに夢中なアンドリュースはとても和樹さんに合ってるなー、と思いました。後半、狂ったように線を引く彼に泣かされた・・・。アンドリュースには紙上で解決することしかできない、その歯がゆさが切なかったです。開演前30分の一人芝居を見ていればもっとその生真面目さを感じられたのかもしれません。ギリギリ入場ばかりだったのでちょっと後悔。
あと、「もちろん可能です!」や「それはありえない!」という叫び声が好きでしたねー。和樹さんは実直な役、少し影を背負ってる役が似合うなー、と思いました。
鈴木綜馬(イスメイ)
このお話の悪役その1、イスメイさん。
初見は本当に腹ただしかったです笑
何もわからないのに、オーナーなのでわがままばかり、金持ちたちの機嫌取りばかり。すぐに人のせいにするし、最後は自分だけボートに乗り込んで生き残るなんて、なんて人なんだろうと思ってました笑
何回か観て、間近で鈴木さんの演技をよく見る機会があり、そこでイスメイの違った側面が見えてきました。イスメイは最初の地図を見つめる場面と、最後の亡くなった人たちが自分の周りに集まる場面で悔しさ、戸惑い、後ろめたさみたいなものを感じるんですよね。そこから、イスメイの人物像が変わっていって、夢を追いかけた1人の男、という見方になりました。自分だけ生き残ったことも、彼はさも正当な権利を行使したという面構えで、心の中で自分の後ろめたさと闘って生きていくのだろうな、と。イスメイは職務放棄をしたわけですが、自分もこのような危機的状況に陥ったときに、職務を全うして死ぬことができるかといったら、それはわからない。もしかしたら逃げてしまうかもしれない。イスメイさんが堂々と生き残ることによって救われる人もいると思います。
そういった面でイスメイという存在も非常に大事だな、と思いました。
あと、鈴木綜馬さんの美しい歌声。「そう人類は偉大な夢を成し遂げてきた。」という歌い出しでLKのラフィキのような、第一声でグッと観客の心を掴めるような美声を披露してくれたので、一瞬でタイタニックの世界に入り込めた気がします。
そうするとあんなに腹ただしかったアンドリュースやスミス船長への罵倒やわがままも信頼ゆえの甘えのように見えてかわいいと思えるようになるから不思議。甲板で乾杯したり、夢の実現を喜んだりしたかったんだろうなあ。
イスメイについては色々な意見があるかと思いますが、私はただの悪役だとは思えませんでした。綜馬さんの素晴らしい演技力と美声のおかげかもしれません。
光枝明彦(スミス船長)
このお話の悪役その2笑
スミス船長の慢心が、この事故を引き起こした一因のように思えます。
42度の方角が危なくて、1件だけ41度っていう報告があったら念のため40度とかにしないんでしょうか?
まあ、船長には経験による自信があったのだと思うのですが。
まだまだ若者(気分)な私には、若者や進歩を毛嫌いする船長が嫌な感じだなー、と思いました。ライトーラーにとってはパワハラ上司以外の何者でもないですよこの人。
しかし後半の可愛らしいベルボーイくんの輝きが、船長に或る日の初々しい気持ちを思い出させてくれるんですが!!この場面がとても好きです。
あと、メイドさんと給仕さんがハートリーのダンスシーンで、階段上から羨ましそうに見てて、スミス船長が「行ってきなさい」って言ってくれたから、2人で走って踊りに参加するんですよね。この場面も微笑ましくて好きなんです。だから船長は若者が嫌いなわけじゃなく、ただ自分の仕事へのこだわりと誇りが強いのかな、と。仕事への自信が行き過ぎると周りからは慢心に捉えられてしまうという例は社会人一年生の私には教訓となりました。なのでスミス船長も嫌いじゃないです笑
嫌いな登場人物が1人もいないのが、このミュージカルのすごいところだなあと思います。
藤岡正明(バレット他)
今回のミュージカルタイタニックでの一番の掘り出し物!!!笑
藤岡さんです。
ゲネプロから藤岡さんだけには毎回泣かされていて・・・とにかく恐ろしく歌がうまい!
お友達から、歌がうまいよ、声が甘いよとひたすら色々聞いていて、何曲かは聴いていたんですが、生で聴くとその声とパワーに圧倒されました。
バレットがまた、とても良い奴なんです。
ダーリーンという恋人をとても大切に思う機関士。プロポーズ(the proposal)が本当ー!に素晴らしくて、ダーリーンになりたくなります笑
ここのブライドくんとの二重唱は本当に至福の時でした。2回目から1幕はここで泣いていました。
バレットはイスメイと対極的な存在という位置づけなのか、自分の命救うチャンスを乗客に与えます。そして、自らはダーリーンへの祈りの歌を歌うのです(プロポーズリプライズ)
ここからは私の妄想なんですが、バレットは直感的にこの航海の失敗を予感していて(barrett's song)、これからのダーリーンの幸せを祈ってブライドに電報を頼んだのかな、と。きっと初めてだったと思うんです。電報を頼むの。値段も知らなかったし。2幕後半、三等客と逃げるときに「昨日無線室に行った時は監察に見つからなかった!」って言って隠し通路に行くので、労働者が船から無線を送ることはあまりよろしいことではなさそうです。そもそも乗る前に「きっとすぐに帰るさ〜」ってベルボーイにお手紙預けてますからね。プロポーズの何回もリプライズされる部分はラブソングというより祈りの歌に近いものがあって、ダーリーンに今でもとても愛しているということと、これからも神のご加護がありますように、という願いを込めた遺書のようなものを電報として送ったのかな、と。
まあ、完璧に予想の域を出ないんですが、1幕で最初に航海の不安を歌うのってバレットだけなんですよね。あとは沈むとは思えないくらい幸せな歌ばかりですし。
そんな考察をしてしまうくらい、素晴らしい演技と歌を披露してくれた藤岡さんでした。これからもちょこちょこ彼のミュージカルは追っていきたいです。
戸井勝海(エッチス、ピットマン)
なにかと矢崎さんと一緒にいることが多かった戸井さん。美声で声量もあって、あと、立ち姿が美しいです。
エッチスさんの時の振る舞いが本当に執事そのもので俳優さんって凄いなあと改めて思いました。
最後のストラウス夫妻にシャンパンを注ぐ場面なんか本当に液体を綺麗な所作で注いでいるし、シャンパンのボトルを持ったまましゃがんで救命胴衣を拾うので、とても難しいと思うんですがスマートな動作で凄いなあって。
エッチスさんとして出る場面が多いので主にエッチスさんの印象が強いです。
一等客と三等客では扱い方に歴然とした違いがあるのが面白かった。イギリスらしいなあって思いました。でも労働者にはあんまり差別的な意識はないのかな?バレットなんかと親しく煙草を吸ってる場面は毎回微笑ましく見てました。ボートの場面でバレットに「なんで席を譲った?」と尋ねたりするし。もしかしたら、バレットと会うことでエッチスさんは色々と気付かされたのかもしれないなー。三等客もちゃんとお客様なんだということとか。そこまでの描写がないのでなんとも言えないですが。
アドリブもあるし、リアクションなんかは結構後半変えてきてて、笑いの少ないタイタニックでは息の休まる貴重な存在でした。
二等航海士で制服の腕の線が2本あるのがマードックさんです。この制服の方達がとても見分けにくいので、初見での印象はかなり薄いものでした。
マードックはホワイトスター社始まって以来最年少で船長試験を突破した、いわばエリート。
しかし船長の重圧に耐えられず、なかなか一歩踏み出せずにいるという航海士さんでした。
自分がタイタニックを沈めたと思ってとうとう自害してしまうわけです。エリートあるあるな感じです。
別に周りのみんなもマードックのせいだと思っていないんです。アンドリュースとイスメイとスミス船長はお互いに責任転嫁してますが、誰もマードックを責めていないし。結果的にライトーラーが正しかったとは思いますが。
内的志向のかなり強い人物だな、と思いました。
またまた妄想ですが、マードックの自殺はキリスト教的な考えがあるのかな、と。実際ここで自殺をする必要はないんですよね。船は沈むのでほとんどの確率で死んでしまうわけだし。自殺はキリスト教では絶対に天国へは行けない(はず)。確か煉獄で木になって鴉に蝕まれるんでしたっけ?もうこの辺りはよく知らないのですが、自ら命を絶つことは天界に行く資格を剥奪される大きな罪らしいです。なので、自分で命を絶つことで、天国に行く資格を自ら絶ったのかな、と。これが彼の贖罪なのかな、と。この自殺の時にエッチスさんが、1幕でマードックが歌った、船長になるということは(to be captain)を歌うんですよね。その後アーメンをやっているので、これは神に向けて歌っていると思っていて、それもあいまってこういう解釈になりました。
西洋人、というかキリスト教の人の自殺は日本人とは大きく認識が違うので、そういう文化の違いがあるのかな、と。何回か何も考えず観てたんですが、結局死ぬのに海に飛び込むわけでもなく、わざわざピストル自殺をするのが疑問だったので、こういう結論(妄想)を出しました。本当のところはトムに聞かないと分かりませんが。
マードックは実際は自殺したという確たる証拠はないのに、映画でもミュージカルでも自殺ですね。でも映画より、ミュージカルの方が意味が込められている感じがしました。
入野自由(フリート他)
自由くん演じるフリートの見せ場は、やはり1幕最後の「no moon」
とても好きな曲です。ハートリーの秋との掛け合いがとても良いです。
氷山を発見する時の演技がとても素晴らしい。「ああ!神様!」というあの場面で一気に緊張感と不安が高まります。
2幕に繋がる大事な場面だと思うのですが、いつもここが全力で演技されてたので、ドキドキして1幕を終えていました。
あと、自由くんの役で好きなのは、やはり最初の乗り遅れた乗客でしょうかねー笑
フランク・カールソンという史実でも乗れなくて助かった人として有名な方みたいですね。最初観た時は蛇足かなって思ったんですけど、人生の色々な分岐点を見ているようで面白かったです。
あと一等客の時の「いやだ、いやだ、あーいやだ」が頭から離れないので困っています笑
小野田龍之介(ライトーラー他)
もうこのミュージカルは「小野田の無駄遣い」です。大好きなミュージカルですが、ここだけどうしても解せなかった。小野田くんにソロを。ワンフレーズでしたが、相変わらず綺麗な声でした。
しかし、ライトーラーは好きな役です。
結局ライトーラーはとても先進的な考えを持っているんですよね。今に近い考え方。
この時代に新しい風を吹き込む考え方。そして、そのどれかでも受け入れていれば船は沈まなかった。しかし、スミス船長はそれを受け入れられない。パワハラ上司に苦しむ若手社員の図です。
三等客を見殺しにしようとする船長に楯突くライトーラーがとても好きでした。
結局私はライトーラー側の人間だから船長にイライラしていたんだと思います笑
多分1幕最初の方角も違ってなかったんですよ笑
彼はきちんと乗客を乗せ、自分も生き残りましたが、ライトーラーが生き延びて作る未来の航海は希望に満ちているな、と思いました。
上口耕平(ブライド他)
年末、るの祭典で初めて観て、あまりの器用さに「わあ!好き!」ってなった上口くんです。光秀は面白くて捻くれた嫌な子でしたが、ブライドはシャイで臆病で独りきりで生きてた無線オタクの無線士です!!大好き!!!上口くんはひとつひとつの演技が細かいんですよね。内気なオタクあるあるの演技をちょこちょこ織り交ぜてきて、本当に面白かったです。毎回笑いを取っていたのは上口くんだけじゃないかな。
バレットの時にも書きましたが、バレットとブライドの二重唱がとても好きです。ゲネからずっと大好きな場面です。どうしても声量的に藤岡さんには負けてしまうんですが、それでも「いつも」の声の張りが日を経るごとにどんどん良くなってて、ポテンシャルの高さを再認識しました。
1幕最初の出航する場面で恋人に手紙を書いてると言ってるんですが、二重唱の前で「1人の人と言葉を交わす時間はないのさ」的なことを言ってたので、本当はお母さんにお手紙書いてるんだと思ってます笑
一等客の上口くんの帽子をくいっとする場面も好きです。あの場面だけで、ひとつ妄想話作れてしまったので、スピンオフを望むレベルです。
最後にバレットの歌をソロで歌うんですが、初めてできた友人(だと私が勝手に思ってる)のバレットにあてた祈りの歌だと思うと悲しくて泣いてしまうんですが、ブライドが号泣しながら歌っている日(23日)は嗚咽が止まりませんでした。
古川雄大(ジム・ファレル他)
とても顔の綺麗なゆんくんが、おっちょこちょいだったりちょろかったりすることに海外演出家の作品だと感じました笑
メイン役のジムは一匹狼?なのかな?難しい男かと思いきや、ケイトが意外と簡単に落とすので、ちょろい!と思ってしまいました笑
多分、「なりたい、メイドに」の歌あたりで良いと思ったんだろうなあ。不倫して子どもがいて、それでも前向きにアメリカで強く生きていこうとするケイトに惹かれたのかな、と思います。
「押し倒して、キスをしてくれ」の意味は図りかねていて困ってます笑
ゆんの役はあとはベルくんが好きです。
ベルも本当に存在した方なんですが、船が沈む時に機関士たちに逃げるよう言ったのに、誰も逃げずにギリギリまで仕事し続けたんですよね。厳しいことを言いながらも任務に忠実で、なんだかんだ従業員との信頼関係も築けるベルくん好きでした。まあ、立ち姿が可愛くて好きだったんですけどね!
あとはドジっ子給仕ですね。エッチスさんが、「いつも仕えている方たちですー」と歌われてるんですがぴろしはまだしもゆんは初めてですよね?この給仕たちに給仕してもらえる一等客が心底羨ましかったです。
則松亜海(ケイト・マクゴーワン)
ケイトその1。1番目立つケイトです。
ジムと出会う前から結婚する宣言をして、本当に物にしてしまうすごい女性。
海外作品でのモテる女像はこんな感じですよね。日本ではモテるのかは謎ですw
歌も上手だし、役柄もあっていて素敵でした。
私自身としてはこういう女性は憧れるので好きですー。
ジムと生き残って、子どもと幸せに暮らしてほしいな、と思います。
菊地美香(ケイト・マーフィー)
2人目のケイト。美香ちゃん。
先生になりたいケイトです。
「素晴らしい船・・・ね」という台詞に色々な思いを感じます。
美香ちゃんは顔が整い過ぎなので、一等客のドレス姿がとーってもお似合いでした。
途中で藤岡さんに向ける冷たい目線が大好き笑
「ママとボートに乗るの」の歌が頭から離れない日がありました。やっぱり歌が安定して上手でした。
関谷春子(ケイト・ムリンズ)
3人目のケイト。正直1番影が薄いんですが、なんだかんだ私は歌もお顔も関谷さんのケイトが1番好きです。みんな上手なんですけど!僅差なんですけど!
ゲネの時関谷さんだけマイク入ってなくて、それでもコクーンの後方に声きこえたので、きちんと発声できてる人なんだなと好印象でした。
一等客のときも超美しいです。
また、メイド姿のときも可愛くて、ベルボーイが彼女にだけ投げキッスするのわかるわーって感じです笑
佐藤隆紀&未来優希(チャールズ&キャロライン)
やっと夫婦にまで到達しました・・・笑
クラーク夫妻(正確には夫婦じゃないけど)は身分違いを乗り越えてアメリカで結婚しようとしているカップル。
「この手をあなたに」が今までなかったなんて信じられない!この夫婦の象徴のような歌なのに。
2回目観た時からは「君がいれば何もいらない」という2人に、悲しい未来を思って涙がボロボロこぼれました。
未来さんは歌も演技も踊りも安定!ちょっと年齢が上かなって思いましたが、歌が始まれば全く気にならず。佐藤さんは、歌が!歌が素晴らしいー!テノールの歌い方から上手にミュージカルの歌い方にシフトしていると思います。演技はちょっと吹替えっぽいけど、初めてにしてはかなり良いのでは!これから活躍されそうですね。楽しみです。とにかく圧倒的な歌で、別れのシーンでは佐藤さんの歌に泣かされます。素晴らしい。
チャールズはちょっとアメリカを舐めてる感じがして、とてもイギリスっぽいです笑
キャロラインの前だから強がってるのかも?強がった嫌味もキャロラインは全部分かってて受け止めているのかな。そういう包容力が未来さんにはありました。
大好きな2人!何を隠そう私が自分に1番近いと思うキャラクターはアリスです。
一等客とお近づきになりたいミーハーなアリス。そしてそんなアリスを温かく見守るエドガー。アリスはゴシップや一等客の皆さんに詳しくって、この機会にぜひお近づきに!って野心溢れる感じなんですが、エドガーは自分の手の中の物を大事にしたいタイプ。でもお互い相手のことを大切に思ってるんですよね。
アリスと言い合いになって、その後の喫煙室でエッチスと出会い、同情されるエドガー。でもエドガーはアリスの愚痴は一言も言わないんです。アリスに言われたことだけ。その後もアリスのわがままをきいて少し応援もしてあげる素晴らしい旦那様。別れのシーンでの笑顔に号泣でした。
対するアリスですが、とてもミーハーで野心溢れる上昇志向強めな女性です。
でも、アリスが言ってることは、現代では普通のこと。「今の世の中、身分の上下なんてないの!」「南の島のリゾートに行きたい」金物屋でこの暮らしをすることは、今は別に難しいことではないし、そう思うと、とても先進的な考えの女性のように思えます。
エドガーと別れるときに、今までのことを必死で謝るんですが、エドガーは全部分かってるんですよね。許してる。とにかくエドガーが理想の旦那さん過ぎました。
佐山陽規&安寿ミラ(ストラウス夫妻)
理想の夫婦決定版、という感じです。
こんな夫婦になれたらと思うし、なれる自信は全くありません。
互いを思いやり、若者を思いやり、潔く死を選ぶ2人はとても幸せそうでした。
「still」は名曲ですね。
観たら必ず泣いてしまいます。
最後にくるくると回り続ける2人が、まるでオルゴールのようで、舞台上が異空間のようでした。
1幕の甲板で方向音痴の話をしている時から仲睦まじくてうるうるしてしまいます。
深くお話せず、所作から歌から演技からとにかく素敵な2人だったということだけ述べておきます。
矢崎広(ベルボーイ/ハートリー他)
最後は矢崎さん。全部で4役なので一役ずつ語ります。
・機関士
最初の場面とバレットの歌の場面で登場します。
格好が1番好きです。やっぱりこのちょっと悪い感じの矢崎さんが私は大好きのようです。
最初に暴言をイスメイに叫んでるところも好きだし、その後のバレットのダンスシーンも少し荒んでるのが素敵です。
後半になってから、背中の筋肉が逞しくなっていてサスペンダーのおかげでそれが分かりやすくて目が♡になってました笑
・給仕係
ゆんと川口くんとする給仕係。ディナーの合図にお盆をバーンと叩くシーンが可愛い。毎回アクションをランダムに変えているようでした。総じて笑顔が上手じゃない!笑
緊張してぎこちない笑顔を見せる場面でした。4回もあるので、毎回バリエーションを変えてくるのはさすがだと思いました。
ゆんがドジっ子給仕なんですが、ゆんよりは先輩なのかな?散らばったフォークやお皿を持って去っていく時のクールな目線が好きです。
そして「なりたいメイドに」の場面でも給仕が登場。則松ケイトに給仕中にパンをこっそり持っていかれるんですが、それに気づいてそっとお皿を戻す優しさが良いです。結局エッチスさんに気づかれてしまうのですが、最後にケイトにパンを返してあげるお茶目なところが可愛い。友達と給仕はケイトのことが、少し気になってたのではないかと邪推してます笑
アメリカに夢を抱いているのは給仕も同じで、みんなの大きな夢に感化されてる部分もあるのだろうなと思っています。
・ハートリー
矢崎さんにソロ曲2曲なんて、このメンツを観たときには全く期待していなかったのですが、蓋をあけると美味しすぎてびっくりしました。「最新のラグ」はダンスナンバー。軽やかに舞うハートリーがかっこよくて!女性を軽くエスコートする姿が素敵でした。群舞の場面で一番前で中心で踊っていて、感動しました。そしてアリスとのダンスシーン。リードして踊ってるのがかっこいい!そして2回も手にキスするんですが、その時チラッと目線を上にあげることがあって、それがとてもかっこよかったです。去り際の手を上げてオケを止めるところもかっこいい。今回は生オケなので指揮者の方と息が合ってるのかな、と思いますが、普段から矢崎さんはリズム感がいいなあ、と思っています。ダンスも動作もSEとぴったりなので。これ、本当にズレる人はズレちゃうので、すごいことだと思ってます。
秋「autumn」はしっとりした曲なんですが、矢崎さん、歌上手になったなあ。後半のファルセットへの切り替えがとっても好きです。難しい曲だし、後半アンドリュースがリプライズを歌うのでこの場面で印象づけないといけないシーンなんですが、アリスとエドガーの仲直りも相まってとっても素敵な場面だと思います。ちゃっかりチップもいただいてるし笑
・ベルボーイ
もう最初から可愛さ満点のベルボーイくん!
仕事の合間にオレンジをくすねて、人の荷物に座って、怒られても帽子をポンって叩けば可愛くて許されてしまう、愛しの14歳。
挨拶しに客席降りするんですが、もうキラッキラで!
前半は序盤のみの出演なんですが、後半からは最初ひたむきに仕事をしていて心を打たれます。後半すぐの「起きて、起きて」はとっても可愛いんですけどね。ピットマンと同じメロディーを歌っているんですが、館内放送はあのメロディーなのかな。ベルボーイはピットマンと仲良しで慕っている感じだったので、もしかしたら真似して一生懸命歌っていたのかもしれません。
おそらく「寝巻きの姿でグランドサロン」で船の事情を知った乗務員たちは、悲壮な気持ちを隠して努めて冷静にお仕事をします。もちろんベルボーイも。
「最後のボートです!」「これが最後です!」ってお客様に言うんですが、それをきっかけにどんどん号泣シーンのオンパレードになるので、ここから大体泣いていました。自分の置かれた状況を確実に把握しているのかは分かりませんが、仕事を最後まで行うベルボーイが愛しかった。
船が沈むことが決まり、船長と話す場面は印象深い場面でしたねー。あの場面で船長をやっと好きになれるので。船長と同じ名前(エドワード)だと知った時に、嬉しそうに近づきかけるんですが、ハッと我に返ってすみません...ってなるところが好きです。ベルボーイのこの状況に不似合いなくらい溌剌と元気の良い姿は多分色んな人を元気づけてるんだろうなあ。
最後のアンドリュースの場面で「アンドリュースさん!!!!!」と叫ぶところはさすがだな、と思いました。毎回とっても良い演技。そして良い声なんです。タイタニックはみんな大声が素敵だったなあ。矢崎さんももちろん。個人的に大声の声が良い人が好きなので笑
アンドリュースがタイタニックの人々たちの悲惨な状況(残るのは人の本性だけで、自分だけ生き残れば良い的な歌詞)を語るなか、無線室で船体が傾いてもベルボーイはブライドたち4人くらいをギリギリまで1人で支え続けてるんです。ベルボーイはそこで亡くなってしまうんですが、アンドリュースの言う世界とその下で起きている間逆の状況のミスマッチ具合が、このお話をより美しく見せているなあと思いました。
最後の冒頭を繰り返すシーンで冒頭よりキラッキラの笑顔でタイタニックを見つめるベルボーイに、叶うことのない夢や希望を感じてなんともいえず哀しい気持ちになりました。
という、1人ずつの感想でした!長い!
あとはちょこちょこ全体の感想をば。
ひとつの曲のリプライズが、違う意味を持っているのがとても面白いミュージカルだなと思いました。
例えばピットマンのアナウンスは二幕のベルボーイが起こすアナウンスに使われています。
バレットのダーリーンへの「プロポーズ」は、最後のボートと2幕フィナーレのブライドから始まる歌に使われています。
バレットはダーリーンに向けていますが、ブライドは恐らくバレット、そして亡くなった犠牲者の方たちに向けて歌っているかと思われます。
そして、1幕のマードックがスミス船長へ向かって歌う「船長になるということは」は2幕、マードックの自殺の場面でエッチスによって歌われます。最後にアーメンをしていることから、神に向けて歌っているのではないかと。(「数多の乗客、その命の行方は、あなたのこの手に全て握られている」)
ハートリーが歌う「秋」を、最後にアンドリュースが歌うことにも何か意味があると思うのですが、まだ分からないですー。(ハートリーが沈む直前まで演奏していたことを表しているだけかもですけど)
そもそも、タイタニックが沈んだのは春なのになぜ新曲が「秋」なのか?そこもちょっと疑問なんですが(冬にtubeが歌うような違和感、と友人が言ってました笑)、誰かが解明してくれることを祈ります笑
とにかく曲が素晴らしくて、色々と考察も楽しかったタイタニック。悲劇はあまり得意ではなかったので、矢崎さんが出演していなければ、恐らく観ることはなかったのではと思うと、矢崎さんに感謝しきりです。
再演あったらまた行きたいなあ。そしてCDでも良いので音源化されることを望みます。アンケートにも書いたので、梅芸さんがご一考いただいてるとありがたいなあ、と思います。