sognamo insieme

君を夏の日に例えようか

人間風車

2017年ベストオブベストでしんどかった舞台。怖い話グロい話が苦手な私にとっては推しがいなかったら絶対に足を運ぶことはなかった舞台だったので、「人生は何事も経験」だと思っている身としては楽しくもありました。

 

〈あらすじ〉

売れない童話作家の平川が披露する奇想天外な童話に、近所の子供たちは大はしゃぎ。けれども、童話の登場人物や題名はレスラーの名前、テーマも"三流大学出身より高卒の方がまし" だから、子供の親からはクレームばかり。

 公園に集まる子供たちの中には、へんてこ童話の主人公になりきって現れる奇妙な青年・サムがいた。

 ある日、平川はひょんなことからTVタレントのアキラと知り合う。その出会いは平川の作風にも大きな変化をもたらしていくのだが…

 

www.parco-play.com

 

〈感想〉

 

序盤からしばらくずっと平川の楽しい童話の世界と平川とアキラの初々しく微笑ましい恋の話です。この部分がとても楽しく、面白かった。

平川の童話は残酷だし教訓もずれているけれど、へんてこで可笑しいので、イギリスとか西欧でウケそうだなあと思っていました。小さい頃読んだイギリスの民話はそういう話が多かった印象です。今は親の顔色を伺った話しかウケない、と断言する国尾にそんなもんなんだなあと思ったり。

童話の世界を役替りでみなさんて演じていくのですが、これがとても面白かった。矢崎さんのやった2作もひょうきんな演技の魅力が十分に活かされていて楽しかったです。小杉だけだと多分心が死んでました笑

最初のが個人的には1番好きだったかなあ。良知くんと矢崎さんの軽妙な掛け合いと堀部さんのツッコミが楽しかったです。全部タイトルがプロレス技なので全然覚えられないのが悲しいところでした。

 

平川がオロの話を作ったところから話はどんどん不穏な展開になっていきます。ここからがしんど過ぎました。休憩がなく、ひたすら休みなく観るのでジェットコースターを下るような恐怖を体感しました。

ラストまで一切救いなくひたすら残酷な話です。サムを使って鬱憤を晴らす平川にも、平川にバレて謝る国尾にも、最後までアキラに謝らない平川にも腹立ちながら観てました。最後まで平川に同情できないままだったんですが、それは平川に自分を少し被せたのかもしれません。

なかなかの問題作だと思うんですが、エンタメとして物凄い完成度だったので、観れて良かったと思っています。

 

平川役の成河さんはなんでもできるパーフェクト俳優だと思っていて、平川も本当に凄かったです。大人になりきれない子どもと狡猾な大人の部分が見え隠れする平川に真剣に腹が立ったのもきっと成河さんの実在するかのようなリアリティのある演技力なんだろうなと思います。

ミムラさんの透明感と加藤諒くんのピュアな姉弟も素敵でした。松田凌くんたちの子どもチームは凌くん以外みんな子どもと親を兼任しているんですが、これがすごくて。毎回オペラグラスで覗いてました。どちらも全く違和感がないんですよね。女優さん、俳優さんのすごさをまじまじと実感しました。

良知くん、あまりにもイケメン。国尾ほんとに許せないんですが、最後謝る場面が可哀想でなんか…許しそうになる…。許してしまう平川と反対にわたしは許さないぞ、と毎回心を鬼にしてました。

そして推しの矢崎広さん。

小杉は初めてここまで嫌な役、感じ悪い役を舞台で観たのですがめちゃくちゃハマっていました。これからもぜひ観たいです。軽薄で上から目線で嫌なやつなんだけど、こういう人いるー!っていう。わたしの周りにもめちゃくちゃいるような気がします。このナチュラルさは演出の河原さんのなせる技、というか…。河原さんと組むと矢崎さんはよりチャレンジする役柄が多いような印象を受けます。新たな一面が見れて楽しいので今後も定期的に組んでいただきたいです。小杉は感じ悪いけどこの作品の登場人物においては最初に殺されるほど嫌なやつではないと考えています。

 

この公演に通ってる間(といっても3回が限界でしたが)7万盗まれたり、子どもが頭から落ちる場面を目撃したり…。世の中が平川の気持ちを体感しろ、と言っているようで怖かったです。人生にどんなことが起きても、罪を憎んで人を憎まず精神を保とう…と思いながら観ていました。