sognamo insieme

君を夏の日に例えようか

音楽劇ライムライト

ライムライトの魔力に抗えない男の美しい人生の物語でした。

 

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1914年、ロンドン。ミュージック・ホールのかつての人気者で今や落ちぶれた老芸人のカルヴェロ(石丸幹二)は、元舞台女優のオルソップ夫人(保坂知寿)が大家を務めるフラットで、酒浸りの日々を送っていた。

ある日カルヴェロは、ガス自殺を図ったバレリーナ、テリー(実咲凜音)を助ける。テリーは、自分にバレエを習わせるために姉が街娼をしていたことにショックを受け、脚が動かなくなっていた。 カルヴェロは、テリーを再び舞台に戻そうと懸命に支える。その甲斐もあり歩けるようになったテリーは、ついにエンパイア劇場のボダリンク氏(植本純米)が演出する舞台に復帰し、将来を嘱望されるまでになった。かつてほのかに想いを寄せたピアニストのネヴィル(矢崎広)とも再会する。テリーは、自分を支え再び舞台に立たせてくれたカルヴェロに求婚する。だが、若い二人を結び付けようと彼女の前からカルヴェロは姿を消してしまう。テリーはロンドン中を捜しまわりようやくカルヴェロと再会する。劇場支配人であるポスタント氏(吉野圭吾)が、カルヴェロのための舞台を企画しているので戻って来て欲しいと伝えるテリー。頑なに拒むカルヴェロであったが、熱心なテリーに突き動かされ、再起を賭けた舞台に挑むが・・・。

 

 初演は観ておらず、映画は昔々にさらっと観た程度で、矢崎さんが出演されるということで観た今回の再演でしたが、とても、とても素敵な作品でした。

以下各役者さん毎の感想です。

 

・舞城のどか

ガチのバレリーナさんかと思ったら宝塚の方だった…。宝塚って本当凄いですよね…。アンサンブルとしてはカルヴェロの5番目の奥さんが1番目立つのかもですが、個人的には2幕の妖精がすごすぎてびっくりしました…。テリーのライバルなのかと思ったら脇役でもニコニコしてるタイプの人だった…。浮気の場面が色気やばいなーと思いながら観てました。

 

佐藤洋介

個人的に今回の掘り出し人(失礼)です。ダンスが上手い。上手すぎて面白いことをすべて踊りでやろうとしていて本当に毎回爆笑していました。この人何者なんだろうと思ったら中学卒業して航海士になったという謎の経歴が出てきたのも気になるところ。ダンス関係ないやん。コロンビーヌの相手役も好きなんですが、ダントツのツボはカルヴェロのマネージャーのお付きの人です。クセが強すぎるアシスタントでいちいち動きが面白くて大好きでした。春のコントの動物とか、カルヴェロの影は人なのか?本当に??と思いながら観ていました。重力とか感じないタイプの人間なのかな???ぜひぜひまたどこかの舞台で観たいです。ロミジュリの死とかやりませんか?

 

・植本純米

ライムライトってカルヴェロが芸人なはずなのに脇を固める皆さんが面白い人ばかりなのはなんでだったんでしょう…wるひまでいう面白おじさん枠だった植本さん。オネエ系演出家のボダリングさんが1番インパクトありました。いつもアドリブが面白すぎてめちゃくちゃ笑ってました。矢崎さんと2人の群衆が毎回ちょっとずつ変わってて面白かったです。カテコで石丸さんのあと「矢崎!」ってかけ声してくれてて、ありがたやと思っていました。

 

保坂知寿

私と母の永遠のドナ保坂さん〜!今回は歌が少なくて、シャウトするような曲でもなかったので物足りなかった…。それでももうオルソップさんが好きで好きで好きで!カルヴェロは絶対オルソップさんと一緒になった方が良かった!彼を生涯理解して影で支え続けてくれたのはオルソップさんだと思ってます。サバサバしてるし、テリーのことも最初は偏見持ってるけど、まあ家賃も払ってなくてドア(矢崎広)も壊されて部屋から消えてたら疑うよね…。後半は良き理解者となってていい女だな〜〜と思っていました。ドッグファイトの時もそうだったので、クリエのイイオンナ枠は知寿姐さんとソニンちゃんなんだろうなと思っています。

 

・吉野圭吾

圭吾さんが前半めっちゃアンサンブルしてて「!?!????」という驚きが隠せず…。なんという贅沢舞台…!めちゃくちゃ踊るし、序盤の街灯との小芝居は何度か観て仕掛けが分かっても、とってもチャーミング。そしてポスタントさん…あまりにも泣けてしまうポスタントさん…。カルヴェロと若かりし頃にやった掛け合いを、後半のショーの前にも繰り返すのはずるい…。ポスタントさんにとってカルヴェロは情けをかけた存在、本当にそれだけだったんでしょうか。青春を、1番輝いていた時期を共に過ごした戦友であり、憧れだった。だからこそ、カルヴェロのために公演を行おうと思ったんじゃないでしょうか。彼の人生を自分もこれから辿る、その希望を託して。

「私たちは一生アマチュアです。それ以外になる前に人生は終わってしまう」

「アマチュアじいさんから、もう1人のアマチュアじいさんへ。健闘を祈る」

この場面が大好きでした。

 

矢崎広

なんと推しがクリエで3番手になりました!!!めでたい!!!出番量にびくびくしながら向かったんですが、前半もめちゃくちゃ出てきて、後半はネヴィル様だったので、満足度が高かったです。前半は新聞売り、ドア、昔の観客、ネヴィル、今の観客が主でした。

新聞売り、最初は嬉々として事件について話していたのに、戦争が近づくにつれてどんどん涙でくぐもっていくのが辛かった…。チャップリンは平和主義だったなあということを、ここやカルヴェロの台詞で思い出しました。

ドアはとりあえず全力で笑いを取りにいく矢崎さんwwwwオフマイクであんまり笑いがなくてもひたすらボケを積み重ねていくその度胸すごい。

昔の観客もひたすらオタクあるあるを積み重ねられてこっちが恥ずかしかった!なんでそんなにオタクの物真似上手なんだ!わたし矢崎さんの前で笑顔で対面したことほとんどないんですが*1、いつも「今回も笑顔で話せなかった…こわいって思われてたらどうしよう…」と反省していたのですが、矢崎さんのお芝居によって、彼にはきちんと緊張が伝わっていたことを知り安堵しました←  途中でこちら(客席)に盛り上がりを指示されるんですが、どうしたらいいか分かんなくて、ただ面白すぎて笑ってました

ネヴィルの回想はめちゃくちゃかっこよくて!テリーから見たネヴィルだから、この回想の通りじゃないんだろうなーと思ってたら、2幕ではもっとカッコ良かったです!(笑)1幕は一声しか歌わないんですが、あまりに上手くなってて震えました…

観客パート2、こちらは1人だけの観客役ですが、観ていてすごくすごく心が痛かった…。興味もなく関心もなく、カルヴェロを馬鹿にしている若者の演技がものすごく上手で、最後にただ「帰ろうぜ」としか言わないのにあまりにも惨めにさせて、本当に最高でした。小杉*2より嫌な奴かもしれない…。こういう役ももうちょっと観たいなあ…最近見てなかったから新鮮でした。

2幕から颯爽と登場したネヴィルは、完璧青年で!ちょっと内気で、でも真っ直ぐでひたすらに良い人でした。最初に会った時からテリーのことが好きで、テリーしか見ていない。でも音楽が鳴ると音楽に集中してしまう、そんなところも好きです。「軍人からのダンスの誘いは断れませんよ?」とか「一度でいいから好きと言って」とか甘い台詞オンパレードであまぴろ*3では絶対言わないのに〜〜とにやにやしてました。でも1番好きなのは、「目の前にいる」に対する「知ってるよ!」の言い方。これときめかせられる矢崎広は天才なんじゃないかと思う。歯の浮くような台詞も貴重で好きですが、何気ない台詞をときめかせられるのも本当にすごいと思います。途中まで、テリーがなぜカルヴェロに想いを寄せているのか理解できなかったネヴィルですが、後半はカルヴェロの理解者にもなり、大切に思っている。彼に未来の自分を見ているのかな、と思いました。最後、カルヴェロが亡くなる間際にテリーの方を涙をためたまま笑顔で促して、息を引き取ったカルヴェロに咽び泣くネヴィルに涙が止まりませんでした。カルヴェロの死に目にはネヴィルしか気づかなかった。そのことになにかの意味を持たせたくてしょうがないです。

また、今回明らかに歌がレベルアップしていて、スカピン現象が起きていました…!満田先生と石丸さんと共演するとミュージカル俳優!ディズニー!な歌い方になるので、この歌い方も極めてもらえたら嬉しいなーと思います。ポップスとかは普段の歌い方で聴きたいですけど。ミュージカルに出続けるなら、この歌い方で高音や声量伸ばせたら強いなあ。惚れ惚れしてました。

 

・実咲凜音

みりおんちゃんは宙組エリザベート以来です。歌が上手なトップさんだなーと思っていたので、今回たくさん聴けて嬉しい。バレエも上手でした…すごいな…。

テリーは才能があるのに依存型で、絶対メンタルトレーニングをもっとしっかりやった方がいいと思ってたんですが、カルヴェロがいなくなっても、死にそうになっていても、舞台に立てるようになっていたので、実はカルヴェロによって自立できるようになっていたんだなあ、と千秋楽に気づきました。そういえば大人になってしまったと、カルヴェロと再会した時に言っていましたね…。

テリーは田舎に家を買うのが幸せで、カルヴェロは旅をしながら2人で舞台に立つのが幸せ。この幸せへの軸のぶれが、2人が交わることはないことを示しているなーと思っていました。テリーはこれから、バレエをずっとやっていくとは思えなくて。きっとピークを過ぎたら引退して、田舎で暮らすんだろうなあ…。芸術では意外といるタイプの人。その横にネヴィルがいるかは分かりません。彼もカルヴェロと同じく、舞台で死ぬタイプの人間だと思うので。

 

石丸幹二

いつもの迫力満点の歌唱力を封印し、あくまでも1人のピークが過ぎた芸人を演じ切った石丸さん。あまりにも素晴らし過ぎてブラボーでした。カルヴェロのプライドや、知性、悲哀を生々しく演じていて、1幕の終わりから尋常じゃなく泣いていました。もちろん全部を共感することはできないんですが、私も似たようなことあったなーとか、それでも続ける意味、のようなものを問いかけられていた気がします。彼は芸人として生き、芸人として死にたかった。それはテリーにも変えられない、彼のさだめだったんだと思います。若さも実力もない、もはや執着の塊になったその中にある輝きを、観客は評価したのかなと最後の歓声に思いました。

私はなにかを死ぬまで続けられることは尊いことだと思っています。カルヴェロが死ぬまで芸人としてあり続けたのはとても羨ましく、カルヴェロの人生は眩しく見えました。

まるで石丸さんのためにあるような役。なんらかの形で認められてほしいと思います。

 

 

今年暫定1番好きな作品でした。

評価の分かれる部分もあるかと思いますが、1人の男の生涯を丁寧に描いていて、観客に委ねる部分も大きく、私はこの作品に向いているタイプの人間なんだなーと思います。矢崎さんを追いかけていると、自分からは手を出さない、けれど素敵な作品に出会えていて、これぞ追っかけの醍醐味だなーと思います。元々好きなタイプの作品に出るのも幸せですけどね(金銭的な面でも…笑)

矢崎さんにはいつかチャップリンの独裁者をやってほしいな〜〜、と夢が膨らみました。これはもう本当に願望でしかないです。あの演説、矢崎さんで観たいんですよね…。いつかチャップリン自身も演ってみて欲しいなと望まずにはいられなかった公演でした。

 


 

*1:そもそも対面する機会もほとんどないため、毎回緊張のピーク

*2:人間風車

*3:あさステ水曜日回のおまけコーナー