sognamo insieme

君を夏の日に例えようか

ふるあめりかに袖はぬらさじ

推し×和物ミュージカルは最高だという話。あと大地真央様がすごいという話。以上!

としたいところですが、これだけで終わるのもあれなのでぽつぽつと感想を書きます。

あまり良いことは書いていないです。

 

www.meijiza.co.jp

 

<あらすじ>

時は幕末。開港間もない横浜・港崎遊郭
岩亀楼の三味線芸者・お園は、旧知の花魁・亀遊を看病していた。
お園のあたたかい励ましと、留学して医学を学ぶという夢を抱く通訳・藤吉の薬のおかげで、
亀遊はどうにか生色を取り戻す。


ところがある日のこと。久しぶりにつとめたお座敷に居合わせたアメリカ人・イルウスに、
亀遊は見初められてしまう。
岩亀楼の主人によって、法外な値段で身請けを決められた亀遊。
藤吉への恋が叶わぬことを儚んだ彼女は、自らの手でその命を絶った。


数日後、亀遊の死の真相を偽って伝える出所不明の瓦版が現れた。
そこには、紅毛碧眼に身を汚されることを潔しとせず、
懐剣で喉を突いた本那婦女列伝に記されるべき烈婦と書かれており、
「露をだに いとふ倭やまとの女郎花おみなえし ふるあめりかに 袖はぬらさじ」
という辞世の句までが添えられていた。


こんな嘘――と笑うお園に、商売上手な岩亀楼の主人は、客が喜ぶ話をするよう命じる。
やむなくお園は、亀遊の悲劇的な話を客たちに語り聞かせ始めた。
結果、「攘夷女郎」としてまつりあげられることとなった亀遊。
岩亀楼は攘夷派の志士たちの聖地となり、お園のお座敷には客が連日押し寄せることに。
亀遊の死を最初に見つけた生き証人として、
一躍花形芸者になるお園だったが……。

 

<感想>

一言で言うと「世界に持っていける和物ミュージカルを作りませんか?」と問いたい作品でした。こんなの世界に見せられない。女性にも海外の人にも見せたくない作品でした。

1幕はとても良いんです。曲も良いし演出も華やか。どこか引っかかりを覚えながらも楽しく切ない。2幕に入ってその引っかかりが攘夷志士たちによって顕になります。

これはミソジニーの話でした。時代としてそういう時代だということは分かっていても、だからこそ弱者が強者を倒す話であってほしかった。人間(というか日本人?)の良い部分と悪い部分が生々しく描かれていた話のように思います。

お園さんも面倒みがよく情に熱いけど、話を盛ってしまうし、つい言わなくて良いことも言ってしまう。亀遊もしとやかで優しいけど生きることを諦め、行動することを嫌がる。藤吉も優しく愛情深いけど優柔不断で情けない。岩亀楼の旦那も藤吉のことを気にかける等の情があるものの、基本的に差別主義だし。攘夷志士も志があるけど視野狭すぎるし、結局1番話に理が通っていたのはイルウスだったのではと思ってしまう。

イルウスが岩亀楼の遊女が日本人と外国人で違うことに「私とあなたとなにが違う?」と旦那に聞いて、旦那が「目の色も言葉も国もちがうじゃありませんか?」と返し、「私は差別は許せない!」とイルウスが怒る場面があるんですが、ここ笑う場面なんですかね…?

攘夷志士が「女子どもに理で詰めようとしてもだめだよ」と言う場面とかも。

いわゆる古典であるヴェニスの商人だってフィガロの結婚だって、女性は立場を超えて強い人に立ち向かうんです。今回はただただ理不尽に叱られ、そのままどうしようもできずに終わってしまった。お園さんが口達者に攘夷志士たちを丸め込むのを観たかった。結局弱い立場の人が強いものに立ち向かう話が私は好きなんだと思います。

そして自分がこんなにフェミニストだとは知らなかった。これは自分でも気付いていなかったので、新しい発見でした。

これは古典というより新劇に近いのかなと思います。文学座だし。友達が文学座の研修所にいて観に行っていた当時から、作風が合わないと思っていたので単純に新劇と私が合わないんだろうなあ。

どこかに外の世界に持っていける和物ミュージカルを作ってくれる人はいないですか…。今のところ2.5しか外に持っていけないので、2.5が嫌だと言ってる偉い演出家さんどうぞ宜しくお願いします…。星逢一夜*1とか好きなんだけどな…

だがしかし推しのひろしくんの歌がもう最高で最上級に素敵だったので、1億点の加点でした。あと月代が現代人と思えないほど似合う。江戸時代のイケメンってこれか…!といった感じ。今のミュージカル役者にここまで和装が似合うお顔立ちの方ってあまりいらっしゃらない(皆さん洋風の美形)なので、これからも和物ミュージカルにバンバン出て推しに新しい地位を確立してほしいです!!!

真央さんはお芝居も歌も踊りも三味線もこなしてらして、その全てが本当に素晴らしかった。あまりにも美しい*2し、オーラが眩い。大地真央オンステージを楽しむ!と思えばひたすら楽しい舞台でした。

 

*1:宝塚雪組作品

*2:年齢調べて驚愕した