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君を夏の日に例えようか

劇団朱雀復活公演-早乙女太一という天才についてー

ピンスポだけがゆらゆらと緞帳を照らす暗闇の中

尺八や三味線とともに、久保田創くんの熱いナレーションが始まる。

緞帳が落ちる。一瞬の静寂。お客さんのハンチョウとともに流れる音楽。

舞台の中心、スモークの中で凛と気高く立つ美女。

この時のなんとも言い難い高揚感が大好きで、私は劇団朱雀に足を運んでいるんだと思う。

これは早乙女太一を人生に一度は生で観てほしいよ!というエントリです。

 

私は13年ほど前から早乙女太さんを劇団朱雀を客席の後ろの方からゆるっとひっそりと眺めています。とってもとっても大好きで尊敬しているけど、推しと呼べるほど知ってはいない、なんとも宙ぶらりんな立場の人間。そんな人間にしてはタイトルが大袈裟ですね。ごめんなさい。

10代の頃から「百年に一度の女形」と呼ばれていた太一くんは、地方興行で私の地元九州にも度々訪れていました。ミーハーだった私はテレビを観ていたゲーノー人が来てくれるということで観に行った覚えがあります。人形のような美しさの太一くんに惚れ惚れして、さすがテレビに出る人はすごいなあと思っていた。

そこから数年空いて、朱雀をちゃんと観に行くようになったのは2013年の原点進化からでした。その前に太一くんが主演していた神州天馬侠に推しである矢崎さんが出ていたので、久しぶりに太一くんを生で拝見したのがきっかけ。この演目はお芝居の後、「早乙女太一舞踊ショー」なるものがついていて、神州の話そのものより太一くんの舞踊に脳内を全部持っていかれたのを覚えている。

お人形のような美しさはそのままに、目線、手指の先、首の傾け方、上半身の仰け反り方、着物の裾裁き、そのすべてが計算しつくされた美しさで成り立っている。あとなんか扇芸が速すぎて意味わからん。太一くんの手と扇って同化してるのかな…。上京して舞台を観るようになり、自分が10代の頃には気づけなかった太一くんの本当の凄さにがっつりと嵌ってしまった私は、そのまま誘われるように翌月の原点進化に向かいました。

地方興行で観た演目は、あゆみちゃんとの切ない兄妹の話なんかの太一くんが主演でイケメンの話が主だったように思うのだけど、私が原点進化で初めて観た演目は「次郎長旅役者」。1幕であんなに美しかった太一くんが青髭のツッコミ上手なおかまとして現れ、アドリブで他の役者を斬って斬って斬りまくる。

ここで頭を殴られたような衝撃を受け、そのまま時間が押しまくった延長戦の3部で私の頭は徹底的にいかれてしまった。3部は老若男女オールスタンディングで踊り狂い、ひたすらコーレスをする。各々が好きなように楽しむ。そして太一くんとゆっくんの目に見えないスピードの殺陣に腰を抜かし、カーテンコールでは座布団投げ。幕が下りて、影マイクでも「モウカエレヨォー!」という太一くんに負けずにアンコールし続ける*1。こんなに楽しくて爽快感に溢れた舞台があるのかと、終わってすぐにチケットを足しました*2

2014年のBUMPでは、矢崎の広さんも参戦して、毎日がてんやわんやのお祭騒ぎ。日々変わる演目にヒートアップする客席。当時仕事が詰まりすぎて、矢崎さんもオタクも頭が沸いていたんじゃないかなと思います。そのくらい、毎日が楽しかった。私がもう一度タイムスリップして観たい舞台は矢崎さんの演じる「弁天小僧菊之助」です。これはもうずっと後悔するんじゃないかと思う。大好きな朱雀と大好きな矢崎さんの夢のコラボレーションでした。

毎回、全てが終わって幕を引く際、太一くんは「お仕事、頑張ってねー」と言う。常人では信じられないほどのパワーで魅せ続けてヘロヘロになっているのに、最後まで私たちへの全力のエールで幕を下ろす。仕事が嫌になっても太一くんのこの言葉で救われた。何度も泣いた。

例えるなら、ミッキーマウスに近い。あとEndress SHOCKの堂本光一くんにも同じことを思っている。どこまでもお客さんに寄り添うカリスマ。早乙女太一はとことんエンターテイナーなんだ。これは、朱雀の舞台を観て気づいたことでした。外部の舞台で観る太一くんは静かで、サービス精神を抑えに抑え、技に徹していることが多い気がするから。

太一くんの黒い噂なんて知っている。消えることのない悪いパブリックイメージだってあることは分かっている。でも、板の上での太一くんはホスピタリティに満ち、私たちに物凄いものを魅せてくれる最高の役者だ。私の知る太一くんはクールだけど芝居に熱くて、面白くて、お客さん想いで、謙虚で、素直で、そしてちょっと意地悪。そんな太一くんの魅力に、笑って泣いて感動して鳥肌が立って目が離せなくなる。私が持っている感情を全てが揺り動かされるような激しさで、全身全霊で舞台からエネルギーを放出してくれる。

私は早乙女太一は天才だと思っている。それは、女形であり、殺陣であり、踊りであり、憑依したような芝居でもある。けれど1番は「お客さんを楽しませること」にかけて天才なんだと思う。自分の全力を人を楽しませるために使い切れるところが、そしてその全力が果てしないところが、私が太一くんを最も好きで天才だと思うところだ。

 

そして劇団朱雀もまた、徹底したエンターテインメントとして確立していた。2015年に劇団朱雀が解散した後、世の中にはたくさんのエンターテインメントで溢れかえっていた。エンタメ興行はここ数年でより盛り上がりを見せ、お客さんを楽しませる仕掛けのある舞台は数多く現れていた。私は解散後もその「楽しいエンタメ」をたくさん享受し、充実した観劇ライフをおくっていて。なので復活公演が決まった時、私にはたくさんの期待と同時に一抹の不安がありました。

この5年間、楽しいエンタメをたくさん観た私は、昔のように朱雀を楽しむことができるのかな…、と。

甘かった。解散公演であんなに言っていたのに。彼らは進化するために解散するんだと。復活公演は演出も技術もクオリティが進化し、大衆演劇をエンターテインメントショーとして見事に昇華させていた。今までの良さをそのままに、世界中どこにもない朱雀でしか見れないエンターテインメントとして地位を確立させていた。

パワーアップした朱雀のチケットは、以前はあんなにすんなり買えたのにすっかり入手困難になっていて、結局行きたかった回数の半分も行けていない。でも、またきっと会える。復活ってそういうことだ。日本中、世界中の人がこの劇団を観て元気になりますように。

 

劇団朱雀復活公演2019年えんぶチャート9位おめでとうございます。

 

全公演、大入りおめでとうございます。

 

そして、復活、おめでとうございます。

 

\待ってたよー!!!!!!!!!!/

 

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*1:これはお客さんが意地悪なのではなく、ドSな太一くんとの闘いなのである。

*2:これが私の人生で四季以外で初めてのリピだった