sognamo insieme

君を夏の日に例えようか

東京芸術劇場30周年記念公演「真夏の夜の夢」

人は人に恋してるのじゃない。

星だの、月だの、太陽だの、
ただの石ころで着飾ったコトバに
恋してるだけなのさ。

日本を舞台にしたオシャレで洗練された乱痴気騒ぎの一夜を目撃しました。

 

www.midsummer-nights-dream.com

 

そういえばひろしくんには「これからもシェイクスピア作品をやってください!!!」って言ったことあったなあと思いつつ*1、コンスタントにシェイクスピア作品に出演してくれて、しかも今回はシェイクスピア作品きってのイケメン、ライサンダーなんて、推しがいのある推しだなあと思うわけです。

 

あらすじ引用

創業130年の割烹料理屋「ハナキン」。
その娘・ときたまご(ハーミア)【北乃きい】には許婚がいた。
板前のデミ(デミトリアス)【加治将樹】である。
デミはときたまごを愛していたが、彼女は板前のライ(ライサンダー)【矢崎広】に恋心を寄せていた。
ときたまごとライは〈富士の麓〉の「知られざる森」(アーデンの森)へ駆け落ちする。
それを追いかけるのはデミと、彼に恋をしている娘・そぼろ(ヘレナ)【鈴木杏】。
森では妖精のオーベロンとタイテーニアが可愛い拾い子をめぐって喧嘩をしている。
オーベロンは媚薬を使ってタイテーニアに悪戯をしようと企み、妖精のパックに命令する。
ついでにそぼろに冷たくするデミにも媚薬を使おうと思いつく。
しかし悪魔メフィストフェレスが現れ、パックの役目を盗みとる。
そこに「ハナキン」に出入りしている業者の面々が結婚式の余興の稽古にやって来て、事態はてんやわんやに……。

 

日本に置き換えているにも関わらず、演出も衣装もルーマニア輸入だったので、私の知ってる日本でもない、異世界感が漂っていたなあと思います。ビニール袋とか多用してて色合いがビビッドで可愛い。現代演出オペラみたい。

 

大学院生の時にシェイクスピア論の授業を取ってたんですが、シェイクスピアって台詞が韻を踏みつつ綺麗なので、そのセンスが凄いなって話を当時友人としていて。

Helena Love looks not with the eyes,
but with the mind.
And therefore winged Cupid painted blind.
Nor hath Love’s mind of any jugement taste,
Wings and no eyes figure unheedy haste.

ヘレナ  (恋人ディミートリアスへの
移り気を嘆いて) 恋は目で見ず、心で見る。
だから、絵に描かれたキューピッドは
いつも目隠しをしてるんだわ。
恋の神様には判断力もない。
翼があって目がないのは、
無分別でせっかちなしるし。〔第一場〕

夏の夜の夢(シェイクスピア) 12の名言

例えばこことか。発音にそんなに詳しくないので違ってたらすみません。詩だったらこういう韻を踏んでる形めちゃくちゃあるんですけど、セリフにこんなに上手に組み込んでるの凄いですよね。これって翻訳されると全く意味がないので*2、この楽しさを英語がわからない自分には体験できないんだろうなあって思っていたんです。ところが、野田秀樹版だと擬似体験がたくさんできる!!!これがとても楽しかった〜!言葉遊びが好きな方だからですかね。「木の精」=「気のせい」とか「夏の精頭」=「夏のせいかしら」とか。妖精以外にもたくさんあったんですけどあんまり思い出せない。ウィットに富んだ言葉遊びで、シェイクスピアも原語で聴くとこんな感覚になるのかなあと思いました。貴重な体験だった…。

登場人物について。世の中の女はみんなそぼろ(ヘレナ)を抱えて生きてると思ってるんですが(主語がでかい)、鈴木杏ちゃんのそぼろが舞台を背負っていて解釈大一致でした。そぼろ、仕草も美しいしバレエのような動きが綺麗だし、メイクは怖いのにどこかかわいい。自己肯定感低いのにデミさんへのアピールが激しいのは海外の女だなって感じがする(笑)そぼろは観客と同じように見て、同じように覚えているので、ストーリーテラーとしても存在してくれてました。おかげでこの不思議な話になんとかついていけました。

でもやっぱり主役はメフィストだと思います。

舞台を日本に変えたことや役名を和名にしたことより、メフィストフェレスの存在がこの話を混沌とさせていたと思います。

この話、ただでさえ登場人物多いのにこれ以上メフィストなんて必要か??と未だに思ってるんですけど(笑)

どういう繋がりかと思ったらファウストにもワルプルギスの夜が舞台になってる幕があるんですね。ワルプルギスの夜(夏至祭)の乱痴気騒ぎってことかー!真夏の夜の夢のあらすじを知っていても、初見では話の内容も登場人物の見分けもよく分からなかったです。みんな白塗りだし。どうしてもメフィストはパックと役割が被るので、手塚とおるさんのパックが影が薄くなっちゃってたのが残念。チャーミングなのに出番が半分だもんなぁ。

メフィストの行動の目的が分からなくて*3、あと隅々で伏線ぽいものがありつつ回収されなかったりするから、最初は観たいタイプの真夏の夜の夢じゃないな〜〜〜って思ってたんですけど、結局メフィストは寂しかったのかなって思ったら後半可愛く思えてきました。これは単に今井明彦さんのお芝居によるところが大きい。カタコトでチャーミングで、そこが怖い感じ。でも、掴みどころのなさの中に幼い子のような側面があって。私はやっぱりメフィストはそぼろが生み出したと思ってるので、後半2人が自分の中にある気持ちに気づいて泣いてる場面は2人とも愛しかったです。

そぼろを取り巻く3人は全員若くて正統派なお芝居。ときたまごのきいちゃん、東京後半は声枯れしてたけど歌上手だったので、今度は歌のあるお芝居観たいなー。デミの加治くんは、多分はじめましてなんだけど、若手俳優として異質な存在感。声も聞き取りやすいし、間の取り方も面白かったのでまたお会いしたい。我が推し矢崎さんはスーパー最高にイケメンでしたね。もはやパンイチはネンイチ頻度で観てるので*4、そんなに驚きはしないんですけど、改めてめちゃくちゃ綺麗な身体でした!!!!ひろしくんの身体のライン好きだなー!!!私は矢崎さんの台詞の温度の高さが好きで、シェイクスピアにぴったりだと思ってるんですが、今回もライサンダーの熱っぽい台詞と合っていてとても良かった。こういう可愛さを封印した正統派なかっこいい役、久しぶりな感じしました。今度はリチャード3世が観たい!この間プルカレーテさんやっちゃったけど!!「馬をくれ!代わりに国をくれてやる!」って言ってほしい台詞すぎる…!!

他の登場人物としては妖精の夫妻もよかったー。加藤諒くんのタイテーニア、どぎつさと本人の可愛さが相まってとてもキッチュ。あと厨房の出入り業者の皆さんも面白かった。最初のミーティングがダントツで笑えたので、元々の皆さんが面白かったのかも。

笑いのツボは正直全然ハマらなかったんですが、これは単純に世代が違うのと笑いのスピードが合わなかったからかなと思う。最近気づいたんですが、わたしは台詞のスピードが速い方が笑いのツボがハマりやすいんですよね。作品としても台詞のスピードとか物語のスピードが速い方が合う。性格がせっかちだからかもしれない。なので、同じ野田秀樹脚本でも中屋敷さん演出の半神の方が、話の意味はわからなかったけどがっつりハマってました。まあタイプ全然違うので、シェイクスピアの悲劇を観たらコロっと掌返すかもしれないです。やっぱりシェイクスピアも悲劇が好きなので。

あと今回、舞台美術と衣装の方のスタッフの方とのレクチャートークがあって、これがとっても楽しかったー!

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舞台セットや衣装のイメージや意味、稽古の裏話まで盛りだくさんで、演出の意図とか作品の理解が深まった気がします。

難解な舞台はこういうのガンガンやってほしい。難解じゃなくてもやってほしい…助手で登壇者の女性2人が経歴も面白くて、普通にパーソナリティについても聞きたいくらいでした。もはやお金払いたかったな…。詳しくはTwitterにまとめています。

総じて芸術の秋を満喫しました。あと2公演、なんとか無事に走り切りますように。

*1:いつの話だ

*2:高橋和子さんの訳はめちゃくちゃ好きですが!!

*3:森を燃やしたいのは分かったけど、なんで燃やしたいの??

*4:あえて韻踏んだ