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昨日の推しに会いに行く

観劇好きのためのオペラ入門

ミュージカルやストプレは観ても、オペラにはなかなか足を踏み入れにくい、そんな方は多いのではないでしょうか。

その割にミュージカルの男性俳優って若干オペラに関わることもあったり…なかったり…しますよね。

私は今はもっぱら観劇にお金を注ぎ込んでいる一観客ですが、一応大学院までオペラを勉強していまして*1

 

というわけで、ミュージカル界隈の方も少しだけ、オペラの世界も覗いてみてほしいと思い筆を取りました。近いようで隔たりのあるミュージカルとオペラの世界。独断で書いてるので関係者は怒らないでね。

 

  

ミュージカルとオペラの違い

まずオペラはめちゃくちゃ敷居が高いのと、歌い手にイケメンと美女が少ない(笑)というのは置いといて、仕様の違いをざっくりとですが、まとめてみました。

①マイク使用の有無

1番目視で分かる部分ではないでしょうか。オペラはマイクなしで3000人クラスの劇場に声を届けます。なので、歌ってる間は踊りもしないし後ろを向いたりもしません*2クラリネット吹いたりバイオリン弾く人も基本やらないですよね?同じです。プロの歌を是非生で聴いて欲しい。

しかしずっと立ちんぼで歌が続くと飽きてきちゃう*3のも確か。最近は演出で頑張ったり曲をカットして冗長にならないようしてるので、バーンスタインやロイドウェバーのミュージカルに慣れてる人はそんなに抵抗なく観れると思います。

②台詞がない

オペラは「レチタティーヴォ」と呼ばれる台詞パートと「アリア(独唱)」「重唱」と呼ばれる歌パートで構成されています。

レチタティーヴォも基本的には歌っています。音も全て決まっているし。そして基本原語というのが敷居の高さの一つ。でも字幕は普通あるので、来日版のミュージカル観れたら余裕だと思います。日本語にしたところで聞き取れないし。

ただしオペレッタと呼ばれるドイツのジャンルは台詞があります。これは日本語が多い。つまりレミゼはかなりオペラに近い*4

③予習が必須

特に2.5次元ミュージカルなんかはネタバレを忌み嫌いますが、オペラは絶対にあらすじを知った上で観た方が楽しい。これはバレエや歌舞伎など古典芸能全般そうだと思います。私は休憩中はトイレに並びながらググって次の幕のあらすじを頭に入れてる。そうするとちょっとトリップ()しても置いてかれずに済むし。作品の中にはさらに当時の時代背景まで調べないと理解できない話もあります。粗筋だけ知っていれば理解しやすいオススメ作品については後述します。

 

最初に観ることをオススメしたい団体

二期会

古の日本のオペラ団体。日本人主体の公演をやる。重鎮は大体ここにいる。地方にも支部団体がある。

藤原歌劇団

二期会のライバル。藤原義江*5という稀代の名歌手が作った古き良き歌劇団。イタリア作品を基本的にはやってます。ここにも重鎮がいる。経営ががったがたで今は日本オペラ振興会として存在している。

③新国立歌劇場

メイン歌手は大体外国から招聘してる。クオリティは担保されてるし、公演数も多いし一番オススメ

④その他について

海外から来る○○歌劇団はピンキリ。NBSは英国ロイヤルオペラハウスが来るので良い。びわ湖ホールもいい。

あとは下北沢の小劇場だと思っていただけると。悪口じゃない。シモキタにもここに書いてない歌劇団にも私が大好きな団体はある。ただ、玉石混合なんです。私より数百倍上手い若手演奏家たちの精力的な活動も、一観客として観ると小劇場と近しく感じる*6

青田買いが好きな方たちは是非積極的に観て、応援してほしい。ただ、観劇が元々好きな、目の肥えた人がまず初めに観るのは絶対一流が良い。安い席でいいのでフルオケで、キャストも指揮も完璧、演出もお金がかかった良質な作品で熱を感じてほしい。

 

初めての観賞にオススメな作品

初めてに向いてる作品!有名な作品!ってたくさんありますが、独断でこれは楽しいのでは、というものを幾つかピックアップします。おすすめ順です。

椿姫(ヴェルディ作曲)

多分世の中で1番上演されているのでは、というほどよく上演されている作品。華やかな社交界に咲く高級娼婦が1人の男と付き合って、そして死にます!話が比較的分かりやすいし泣ける!あとドレス多めでキラキラしてる!エリザとか宝塚好きな方にオススメです。

カルメン(ビゼー作曲)

とにかく曲が、あれもこれも聴いたことあるメロディが多出。カルメンという魅惑の悪女が男を誘惑して婚約破棄させた後、振って殺される話!カルメンに共感できる人はそんなに多くないと思うので、みんなミカエラ好きになって。わたしはそこまで好きな話ではない。でも分かりやすいし、知ってる曲が多いという点でオススメです。フランス物ではダントツ1番有名。

トゥーランドット(プッチーニ作曲)

荒川静香選手がイナバウアーした、あの超有名曲作品。全編通して中華風のメロディで、盛り上がる華やかな楽曲が多い*7。話は亡命している王子がトゥーランドットという、とんでもなく冷酷な女王に殺されそうになりながらも口説き落とすという分かりやすい話。イナバウアーの場面は王子に「はあ?」って思うこと間違いなし。これまたトゥーランドットに感情移入できる人は少ないんじゃないかと思うので、リューに泣いてほしい。オペラはライバルの女性が素敵な作品が多い。エポニーヌ的な子が多いからかな。エンディングは壮大な夕焼け小焼け。

コジ・ファン・トゥッテ(モーツァルト作曲)

モーツァルト作品では、個人的に1番オススメ!姉妹の彼氏たちが入れ替わって別人として姉妹を口説き落とし、姉妹が1日で靡くか賭ける話。設定は結構イライラするけど、姉妹が心を動かす過程が人間の本質を描いていてお見事。タイプの違う女性3人それぞれどこか共感できるので、数世紀経っても人間の本質ってあまり変わらないのだなあと思う。

愛の妙薬(ドニゼッティ作曲)

物語として大好きな話。1人の冴えない男が、村1番の美女に振り向いてもらうため、インチキ薬屋から偽の惚れ薬を買う。これが、村を巻き込んだ大騒動となる…。顔でも金でもないところに惹かれるヒロイン、アディーナが魅力的。高飛車で鼻につくところもあるけど、最後まで観てほしい。曲は無駄にメロディが細かく転がるので好みが分かれそう。時代の流行だったので、あまり気にせず観てください。

ラ・ボエーム(プッチーニ作曲)

ミュージカル好きにはお馴染みのRENTの元ネタになっている作品。RENTよりもっとシンプルな構成で、メロディも相まってとても美しい物語です。ヒロインのミミにまとわりつく「貧困」については、少し時代背景を知っておいた方が入りやすいのがネック。でも知らなくても、芸術家とお針子の恋物語として分かりやすいストーリーではある。キャラクターもストーリーもRENTとは全然違うけど、若者たちの青春の輝きと死、というテーマ性は共通していると思います。

道化師(レオンカヴァッロ作曲)

ドラマの相棒でも使われたことがあるように、サスペンスが好きな方にオススメ。あるサーカス団で育てられたヒロイン、ネッダは座長であり育ての親でもあるカニオと夫婦。しかしネッダは村人と浮気しており、それを知ったカニオが本番中に復讐を企てる。

カニオの狂気の中に悲しさが見えてこちらも切なくなる。でもネッダの気持ちもとっても分かる。さくっと1時間ちょっとで観れるのも手軽で良いです。よく同時に上演してる「カヴァレリア・ルスティカーナ」は結構下調べが必要なので、あまりオススメしません。曲はこっちのが好きだけど。

リゴレット(ヴェルディ作曲)

「Les Misérables」「ノートル・ダム・ド・パリ」などユゴー作品が好きな方にオススメ。せむし男が大事に育てた娘。しかし初めて恋した男は女癖最悪の色男だった…。ただただ悲しい物語で、ちょっと登場人物が交差するので入りにくい部分もあるけど、ユゴー好きなら刺さるところがたくさんあると思う。

有名だけど初めて観るのには向いてないと思われる作品

こっちは怒られそう(笑)個人的に好きな話もたくさんあるんですが、下調べが必須なので初見はあまり意味が分からないかと思います。あくまで主観なので観ることを妨げるものではありません。

魔笛(モーツァルト作曲)

子ども向けっぽい装いで、モーツァルトの素敵な音楽がふんだんに使われていますが、その実フリーメイソンの理念に則って作られているところが多く、誰に感情移入したらいいのか分からないまま話が進みます。前半後半で善と悪がひっくり返る展開は今でもよくありますが*8、これほど突飛なのはあまり観ないと思います。入り込めなさすぎて、よく歌われる夜の女王のアリアでやっと目が覚める。子どもと観るならフンパーディンクの「ヘンゼルとグレーテル」の方がよっぽど分かりやすい*9です。

フィガロの結婚(モーツァルト作曲)

モーツァルトつづき。多分1番有名ですが、私個人的には最初に観るにはオススメしません。三部作の二作目という位置の微妙さが話を分かりづらくしてると思う*10初夜権とかいうやばい権利を復活させ、行使しようとする伯爵をみんなで懲らしめる話です!これだけだと分かりやすいんだけど、なにせ4時間あるので。その中で何度も二転三転するから私も途中の展開が思い出せない…笑

序曲が死ぬほど有名なので、これを聴きに行ってほしい。話を理解したいなら相関図必須。じゃないと大体2幕の終わりで寝る。

ナブッコ(ヴェルディ作曲)

イタリア第二の国歌「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って」のオペラ。ヴェルディ後期は政治的な話が多くなってめちゃくちゃ難しい。私は途中で挫折しました。当時のイタリアについて勉強するために観るのはありあり。でなければ上述した2作品かシェイクスピア作品の「オテロ」や「マクベス」の方が観やすいです。

アイーダ(ヴェルディ作曲)

中学の音楽の授業で観た方も多いはず。凱旋行進曲がサッカーで使われまくってるので、それ目当てに観に行くのはあり。オペラが総合芸術だということを示しやすい作品なので、バレエやセットもすごい。本物の馬が出てきたりする。でもお話はあんまり展開がなくてそれほど入りやすいと思えない…。ミュージカルの「アイーダ」や「王家に捧ぐ歌」が好きな方は一度観てみてもいいかも。結構違います。

 

お手頃に鑑賞する方法

オペラといえばチケット代の高さ。ランクとしてはフィギュアスケートと同じくらいだと思います。(1万〜5万)

できるだけお手軽に楽しみたいなら利用してみてほしい一覧です。

公演のC〜E席

上述したオペラ団体も総じてS席はそこそこお値段がします。でもやっぱり生で聞いて欲しい!そういった場合、席区分が細かいのもオペラの特徴です。これはミュージカルや商業演劇も見習ってほしい*11…。安い席もミュージカルほど激戦ではないのでオススメ。ただ、1番安い席は全然見れなかったりするので*12、下から2つ目くらいの席がいいかも。それでも5000円くらい。

ライブビューイング

最近は映画館でのライブビューイングも充実してきました。生で聴く迫力には及ばないけど、日本ではなかなか聴けない海外の超一流歌手たちの最新の作品を観れるところが魅力。

 

www.shochiku.co.jp

 

tohotowa.co.jp

 

動画配信

本音は全然オススメしません*13が、自宅での生活を余儀なくされている今、試しに観てみてもいいと思います。

 

www.nntt.jac.go.jp

魔笛トゥーランドットは観たい。オネーギンは全部観たことないので挑戦してみます(自信ない)。

↓METとロイヤルオペラもありがたいけど字幕ないので、かなり厳しい…

Metropolitan Opera | Home

www.roh.org.uk

終わりに

独断と偏見で鑑賞のコツからオススメ作品まで書いてみました。オペラは展開が遅く、話も古くて馴染みにくいものも多いですが、人間の変わることのない感情を描いているところが魅力です。200年以上経っても人間は相変わらず恋して憎んで悲しんで慈しむ。普遍的な感情を持つ登場人物に寄り添って、ときめいて、泣いて。オペラを楽しんでくれる人が少しでも増えたらいいなと思っています。

*1:下手だけど細々と地道に修行中

*2:演出によってはままあるけど

*3:私はどうやって声出してるのか、身体を観察してるからいいけど普通に退屈になると思う

*4:細かいので割愛しますが、レミがオペラではないのは時間経過の違いだそう。オペラは初期作品は朝の場面で始まって夜の場面で終わるので(照明の都合)、短期間の物語が向いています。レミのように1人の半生を描く物語はオペラに不向きなようです。半生を描いてる作品もあるんですけどね。恩師談です。

*5:エールにも出ないか期待

*6:この層とか合唱団が呼ぶお客さんが、1番新たな顧客層なのも事実。ただ、ここから入ってオペラを好きになってくれる人がいるかというと疑問

*7:ドラがドーーンって感じ

*8:すでにここ最近だけでGOZENも偽義経もそうだったなあ…

*9:しかし曲はこっちの方が数倍難解

*10:1作目のロッシーニセヴィリアの理髪師のがよっぽど分かりやすいと思う

*11:1階全部と2階席前方までS席とかやめて

*12:東京○化会館の悪口です。聞いてる?

*13:私も観ますが見終われる自信がない