自分が成仏したら、この記事を書こうと思っていました。
成仏というのは、矢崎さんが土方さんを辞めた際に仰っていた言葉で、つまるところ自分の気持ちを昇華させられたら、こういった文章を書こうと思っていました。
2016年8月17日、私はとうとう気持ちに整理をつけることができました。
それはさよならとお別れすることで、しかし本心では望んでいた終わりで、楽しかった祭とつらかった2年の終わりでもありました。
2014年の10月1日、ミュージカル薄桜鬼の次回作から松田凌の斎藤一と矢崎広の土方歳三を見れないことが決まりました。
本当に自分でも笑ってしまうんですが、泣いて泣いて泣きすぎて、豆腐しか食べられなくて(笑)
ずっと予感はしていたのに、いなくなる心づもりをしていなかった私が悪いんですが、発売されたばかりの風間篇を見返すこともつらく、矢崎さんに対しての憤りすら感じて、塞ぎ込んでしまっていました。
彼は働き者なので、その後すぐからジャンヌダルクでアランソン様を立派に演じており、それはそれは素晴らしい演技で傷心中の私を元気にさせてくれました。
矢崎さんによって凹み矢崎さんによって励まされていたわけです(笑)
私にとって矢崎さんの演じた役で1番好きな役で、彼の演技の凄さを感じた役が土方歳三でした。
あまりにもしっくり演じすぎていて、私の中では、「矢崎広」と「矢崎広が演じる土方歳三」がイコールにならないくらいでした。同じ人だと思えないんです。全然意味わからないかもしれませんが。
矢崎さんの魅力を知ったのはるひまや鍋ですが、ファンになる大きなきっかけとなったのは土方さんです。これはもう断言出来ます。
沖田篇で「これ誰?」となって、土方篇で目が離せなくなった。
怒涛の展開の中、矢崎土方の凛とした姿勢に心を打たれました。彼の全てを背負って突き進む姿勢や想いに、真っ直ぐな目に、これまで観てきた舞台のどの役よりも共鳴し、好きになりました。
矢崎さんの土方歳三は本当に武士として生きてきたかのように見えるんです。彼の背中には新選組や血や砂埃が見える。背負っているものが大きすぎて、潰れそうで、それでも前に突き進んでいる。「舞台で生きている」という表現を初めて実感を持って観れた役でした。
台詞の一言一言が自分の指針になっている部分もたくさんあって、私生活で本当に苦しい時期や迷っている時期、土方篇のCDやDVDを延々と聴いて自分を奮い立たせていました。
「私は私の信じる道を突き進んでいこう」自分の人生に対してそう思えるようになったのは、矢崎さんの土方さんのおかげです。
矢崎さんの土方さんを見れないということは、自分の人生の師の死に値するくらいつらいことでした。
せめて、最後だと知って観たかった。矢崎さんの口から土方歳三に対しての想いを聞きたかった。しかし、それは叶うことなくどんどんと月日は流れて行きました。
沖田篇を初めて観た時に「このミュージカルが散り終わるまで見届けよう」と決めていたので、そこからも薄ミュは見続けていました。毛利さんはこういう引きずったファンに対してのアフターケアをとても丁寧にやってくださる演出家だと思っています。
新しい流れについてこれない者は切り捨てられるような舞台も多い中、黎明録の山崎の言葉に救われたファンは決して私だけではないはずです。初期のメンバーが好きだと言いたい。でも薄ミュも見届けたい。そうやってフラフラと観ていたのに、「好きなままでも良い。伝えていけばいい。今を見てくれるならそれでいい。誠は繋がっている」と毛利さんから言われたように感じました。自分が好きだったのは薄ミュではなく、矢崎広の土方歳三のみだったのかもしれない。そう思うと観に行くのがすごくつらくて、演者にも申し訳なかったのに、とても楽になりました。好きなままでもいいんだ、と思えて。
人というのは不思議なもので、「これを受け入れろ!」と言われると全力拒否したくなるけど、「過去を好きなままでもいいから、これからも観てね」と言われると今のメンバーの良いところが見えるようになり、受け入れられるようになってくるんです。メンバーは全然違うけれど、彼らの中に初期から決して消えない熱いものは流れている。そのことに気付けるようになってきました。
今、全てをフラットにして薄ミュシリーズでどの作品が1番好きかと言われると、黎明録か風間篇だと思います。
矢崎さんがいなくなったあと、薄ミュに対しての熱は確かに少なくなりましたが、それでも楽しく観れるようになったのは、黎明録のおかげです。毛利さんのおかげです。私はこの作品自体を好きでいたかったので、本当にありがたかったです。
矢崎さんに対しての熱は冷めることなく続いていました。それは矢崎土方への気持ちは矢崎さんへの気持ちと全く違うところにあったからかもしれません。ベクトルが別というか。矢崎さんは「応援したい」という気持ちが強いんですが、土方さんには「支えられている」と思うんです。土方さんをやっていない間も矢崎さんの演技は大好きで、矢崎さんのことも大好きでした。
ただ、もう副長が見れないことは心残りとして、古傷としてたまに心の中で疼いていました。
そんな中、薄ミュLIVEが発表されました。2回目の薄ミュLIVE。「東くんの左之がとても人気なのに、ここにきて左之篇ではなくLIVE…?」とは思いましたが、とりあえず行くことは決めていました。
そして、ゲスト発表で矢崎広の名前を見つけ、もう絶対この日は行こうと決意を固めました。
2年間幽霊のように矢崎土方に取り憑かれていた私が、さよならをできる日はここしかないと思ったのです。
チケットを無事に手に入れた私に公演前日に「トークゲストとしての登壇」と発表がありました。
「トークゲスト…?演じないってこと…?」という絶望の中、日は着々と迫っていて、他の日のゲストのトークレポを読むたび、ハードルを下げ続ける日々でした。
「演じなくてもいい。歌わなくても、殺陣がなくても。薄ミュについて、土方さんについて話してくれる矢崎さんが観れるならそれでいい」
と、心に決めて、それでも楽しみすぎた当日。
フォロワーさんから、5列目センターとかいうとんでもない席をお譲りいただき、LIVE自体をとても楽しく観ていました。黎明録メドレーで泣いていたところで、トークゲストの登壇に。登場した瞬間「ヤイサー!!」と叫ぶ矢崎さん、いえ、土方さん!!!!!!!
目の前にいたのは紛れもなく土方さんでした。この2年、土方さんっぽい声を出していた役もあったのですが、全然違いました。2年ぶりに聴いた土方さんの声でした。矢崎さんの可愛らしい話し方から突然現れる土方さん。
ダイジェストを懐かしそうに見ながら、毛利さんから「それじゃあ、一曲お願いします」と言われてすんなり歌う矢崎さん。
「いいか、逃げるなよ」から始まる歌。
え、は、冷厳な瞳!?セリフ付き!?!?
私の脳内は大パニックでした。今目の前で行われている光景が夢を見ているのかと思いました。とりあえず引きつけを起こすくらい泣いていました。5列目で。
矢崎さんの目線がぼんやり自分の辺りを見ている(ような気がする)中、大号泣です。途中で刃を向けるように手を出していて、その目線はまさに土方歳三でした。厳しさと優しさを兼ね備えた土方歳三の目でした。
そのまま毛利さんから、「台詞ききたいなあ」ってリクエストがあり、
「自分の心の中に思うところがあって、譲れないものがあるなら真っ直ぐに前を見ていろ。なすべきことから目をそらすな。」
「斬られてえ奴は前に出てこい」
を言っていただきました…!
そこから、薄ミュが懐かしいという話になり、C&Rをしていたら松田副長の登場!!!
副長が2人!!!!!なんか死ぬほど叫んだのを覚えています。
近藤さんからどっちが本当のトシ?みたいな流れになってビーチバレー対決。
「決して後退はしねえ」と言う矢崎副長。
今を生きる松田副長に花を持たせるかと思いきや、めっちゃしっかりバレーをして完全勝利をきめる矢崎副長。
お盆になって還ってきた矢崎土方は思っていたよりとんでもなく元気でした。
ソワレはこれに加えてビーチバレーの台詞が
「必ず勝ってみせる。信じて待ってろ」
でしたし、もうなんかノリノリで元気すぎて2年間矢崎さんの中で元気に生きていたことがありありと分かりました。
ソワレで「まあまあだな」と松田副長を認め、拳を突き合わせて誠を引き継いだところで、「ああ、もう満たされました」と完全敗北でした。
私は結局毛利さんの演出に逆らえないし、矢崎さんの演技に惹かれるしかない。
さよならできました。
矢崎さんの中で土方さんは元気に生きていること、矢崎さんが土方歳三を未だ大好きなこと、たまに矢崎さんの中に土方さんが垣間見えること、本当は気づいていたのに見ないフリをしていました。
今の薄ミュのメンバーがしっかり初代からのバトンを受け取っていること、そして私自身が今のメンバーもとても好きになっていること、このことにも気づいていたのに見えないフリをしていました。
本当は分かっていたし気づいていたのに、昇華できなかった思いが邪魔をして、見えなくなっていました。
これでもかというほどに見せてくれて、会わせてくれて、確かに姿形は矢崎さんなんですが、そこに紛れもなく土方さんがいて。
こんなに長い時間勝手に待っていたのに、その期待に矢崎さんが120%で応えてくれました。
感謝しかないです。彼の薄ミュへの想いは本当に熱くて、私なんかより全然強かったです。
お別れをさせてくれてありがとうございました。
もう二度と会えないかもしれないけど、私未練はないです。
また観れるならとても嬉しいし、絶対に行きますが、もう執着はしなくても生きていけそうです。
それでも、私の中で大切なひとで、矢崎さんの役で1番好きです。別次元で別の存在として好きです。
一生とは言えないけど、また矢崎さんの役でこれ以上好きな役に出逢えるかもしれないけど、今のところずっと好きだと思います。
矢崎さんは自分たちのことをよく「紛い物」として新選組になぞらえてお話されたりします。でも、薄ミュから薄桜鬼に入ってゲームやアニメをプレイした私にとって、誠なのは矢崎さんの土方歳三です。初期の薄ミュキャスト達です。千鶴が新選組を誠の武士と思ったように、私にとって誠の土方歳三は矢崎広でした。
本当に本当にありがとうございました。
私はこれからも薄ミュを見続けるだろうし、見続ける限り、これからも悲しいこともあると思います。もうその片鱗も見えていますし。それでも、これからも見続けたいと思います。
松田のがっくんには重くて重くて重過ぎるバトンを受け取ってもらっていますが、彼なら伝説の向こう側へ行けるポテンシャルがあると思っています。
黎明録を経た土方歳三を突き進んで貪欲に上を目指して演じてほしいです。
矢崎さんを追いかける限り、彼の中に生きる土方さんをちょっとだけ垣間見れます。それは彼の精神性とリンクするところがあるからかなあ、と思っています。今のところ、このことを大事にありがたく、生きていこうと思います。