sognamo insieme

君を夏の日に例えようか

ふるあめりかに袖はぬらさじ

推し×和物ミュージカルは最高だという話。あと大地真央様がすごいという話。以上!

としたいところですが、これだけで終わるのもあれなのでぽつぽつと感想を書きます。

あまり良いことは書いていないです。

 

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<あらすじ>

時は幕末。開港間もない横浜・港崎遊郭
岩亀楼の三味線芸者・お園は、旧知の花魁・亀遊を看病していた。
お園のあたたかい励ましと、留学して医学を学ぶという夢を抱く通訳・藤吉の薬のおかげで、
亀遊はどうにか生色を取り戻す。


ところがある日のこと。久しぶりにつとめたお座敷に居合わせたアメリカ人・イルウスに、
亀遊は見初められてしまう。
岩亀楼の主人によって、法外な値段で身請けを決められた亀遊。
藤吉への恋が叶わぬことを儚んだ彼女は、自らの手でその命を絶った。


数日後、亀遊の死の真相を偽って伝える出所不明の瓦版が現れた。
そこには、紅毛碧眼に身を汚されることを潔しとせず、
懐剣で喉を突いた本那婦女列伝に記されるべき烈婦と書かれており、
「露をだに いとふ倭やまとの女郎花おみなえし ふるあめりかに 袖はぬらさじ」
という辞世の句までが添えられていた。


こんな嘘――と笑うお園に、商売上手な岩亀楼の主人は、客が喜ぶ話をするよう命じる。
やむなくお園は、亀遊の悲劇的な話を客たちに語り聞かせ始めた。
結果、「攘夷女郎」としてまつりあげられることとなった亀遊。
岩亀楼は攘夷派の志士たちの聖地となり、お園のお座敷には客が連日押し寄せることに。
亀遊の死を最初に見つけた生き証人として、
一躍花形芸者になるお園だったが……。

 

<感想>

一言で言うと「世界に持っていける和物ミュージカルを作りませんか?」と問いたい作品でした。こんなの世界に見せられない。女性にも海外の人にも見せたくない作品でした。

1幕はとても良いんです。曲も良いし演出も華やか。どこか引っかかりを覚えながらも楽しく切ない。2幕に入ってその引っかかりが攘夷志士たちによって顕になります。

これはミソジニーの話でした。時代としてそういう時代だということは分かっていても、だからこそ弱者が強者を倒す話であってほしかった。人間(というか日本人?)の良い部分と悪い部分が生々しく描かれていた話のように思います。

お園さんも面倒みがよく情に熱いけど、話を盛ってしまうし、つい言わなくて良いことも言ってしまう。亀遊もしとやかで優しいけど生きることを諦め、行動することを嫌がる。藤吉も優しく愛情深いけど優柔不断で情けない。岩亀楼の旦那も藤吉のことを気にかける等の情があるものの、基本的に差別主義だし。攘夷志士も志があるけど視野狭すぎるし、結局1番話に理が通っていたのはイルウスだったのではと思ってしまう。

イルウスが岩亀楼の遊女が日本人と外国人で違うことに「私とあなたとなにが違う?」と旦那に聞いて、旦那が「目の色も言葉も国もちがうじゃありませんか?」と返し、「私は差別は許せない!」とイルウスが怒る場面があるんですが、ここ笑う場面なんですかね…?

攘夷志士が「女子どもに理で詰めようとしてもだめだよ」と言う場面とかも。

いわゆる古典であるヴェニスの商人だってフィガロの結婚だって、女性は立場を超えて強い人に立ち向かうんです。今回はただただ理不尽に叱られ、そのままどうしようもできずに終わってしまった。お園さんが口達者に攘夷志士たちを丸め込むのを観たかった。結局弱い立場の人が強いものに立ち向かう話が私は好きなんだと思います。

そして自分がこんなにフェミニストだとは知らなかった。これは自分でも気付いていなかったので、新しい発見でした。

これは古典というより新劇に近いのかなと思います。文学座だし。友達が文学座の研修所にいて観に行っていた当時から、作風が合わないと思っていたので単純に新劇と私が合わないんだろうなあ。

どこかに外の世界に持っていける和物ミュージカルを作ってくれる人はいないですか…。今のところ2.5しか外に持っていけないので、2.5が嫌だと言ってる偉い演出家さんどうぞ宜しくお願いします…。星逢一夜*1とか好きなんだけどな…

だがしかし推しのひろしくんの歌がもう最高で最上級に素敵だったので、1億点の加点でした。あと月代が現代人と思えないほど似合う。江戸時代のイケメンってこれか…!といった感じ。今のミュージカル役者にここまで和装が似合うお顔立ちの方ってあまりいらっしゃらない(皆さん洋風の美形)なので、これからも和物ミュージカルにバンバン出て推しに新しい地位を確立してほしいです!!!

真央さんはお芝居も歌も踊りも三味線もこなしてらして、その全てが本当に素晴らしかった。あまりにも美しい*2し、オーラが眩い。大地真央オンステージを楽しむ!と思えばひたすら楽しい舞台でした。

 

*1:宝塚雪組作品

*2:年齢調べて驚愕した

舞台「GOZEN-狂乱の剣-」

待ちに待った推しの殺陣舞台にして、7月に特撮界隈をざわつかせたトンチキ(?)映画の続編です。

映画を遥かに超えるどんでん返しにより、結果的に大感動の手に汗握るスペクタクル時代劇となりました。展開がぶっ飛び過ぎると逆にめちゃくちゃ感動するんだな、という新たな学びを得ました。

 

前作映画の感想はこちら(今回もですが、本ブログにはネタバレしかありません)

 

k1mg.hatenablog.com

 

GOZENは推しである矢崎さんの久しぶりの殺陣舞台!!!!そしてずっと望んでいたハムレットの舞台でした。

小学生の頃、少年少女名作集的な本でシェイクスピアを読み漁っていた私ですが、ハムレットだけはなんでだか入り込めず、読み終わってもなんのことだかわからず、どこか読み飛ばしたんじゃないかと戻って読み直すレベルで意味が分からなかった物語*1。大学院でシェイクスピアを授業で学ぶ頃にストーリーだけはなんとなくわかり(ほんとになんとなく)、でもハムレットの気持ちも、物語が伝えたいこともなんにも分からない作品として私の中では位置付けられていました。

きっと矢崎さんなら、その演技力で分かりやすく噛み砕いてくれる。そんな期待を持って臨んだ今回の公演。毛利さんとのタッグによって、伝えたいことがガツンと伝わる、きちんと軸のあるハムレットになっていたなあと思います。

 

府月藩・藩主の嫡男・望月八弥斗(矢崎広)は、 他国への修行から帰国して驚いた。
元気だったはずの父が急病で死んだと聞かされたのだ。
そして藩主の座に就いたのは父の弟・望月甲斐正(波岡一喜)であり、 母・朝霧(AKANE LIV)はその妻になったという。
ショックを受け、失意の八弥斗。その心の支えは、恋人の小松原奈奈(若月佑美)だけだった。
奈奈は、父である家老・小松原烈山(山本亨)の反対を押し切り、八弥斗に寄り添うのだった。

その頃、城内に亡霊が出るという噂が流れる。
噂を聞いて豪胆にも会いに行った八弥斗は、その亡霊は父で、その死が弟・甲斐正の手による暗殺だったと聞かされる。
八弥斗は甲斐正への「復讐」を決意する。だが、甲斐正には「光と影」と呼ばれる最強の護衛がついていた。
「光」は、奈奈の兄・蓮十郎(松村龍之介)、 「影」は赤目の異形侍・結城蔵人(前山剛久)である。
この二人が傍にいる限り、甲斐正にはなかなか手を出せそうにない。
油断を誘うために狂気を装い、機会を待つ八弥斗。

一方、甲斐正は御前試合を開催する計画を立てていた。
表面上は殿を楽しませるために藩内の手練れを集めて試合をさせる名目だが、 真の目的は、藩内に潜伏した幕府や他藩の隠密を炙り出し、公開処刑することであった。
己に復讐の目を向ける八弥斗をも出場させ、隠密たちもろとも殺そうとする甲斐正。
八弥斗は罠だと知りながら、甲斐正に近付く機会と考え、御前試合への参加を承諾する。

そして運命の御前試合が始まった。
郷田半左衛門(井澤勇貴)、田宮源三(松本寛也)、 白河三太夫井俣太良)など剣豪たちによる“死合い”が繰り広げられる中、 八弥斗はそこで怪しげな剣士・流狂四郎(元木聖也)と出会う。
狂四郎の放つオーラにただならぬものを感じる八弥斗だったが、 この出会いが周囲の人々の運命をもフルスロットルで狂わせていくのはまだ知らない。
やがて御前試合という名の「死の宴」は思いもよらぬ展開を見せていく。
行き着く果ては、誰も予測できない壮絶なクライマックス!!

 

…ここまでは普通にハムレットでした。1幕だけど。全然序盤にここまで進んじゃうけど。ハムレット知ってたらこのまま甲斐正の前で最大のライバル、狂四郎と戦って最後に甲斐正を討つのかな、と思うじゃないですか。ラストに蓮十郎と戦って死ぬのかな、とか思うじゃないですか。

まさか1幕の最後に狂四郎がパパと判明し、しかも甲斐正よりもやばい世界征服を成さんとするため黄泉の国から蘇り、八弥斗はそんな父親を倒さなければならないなんて、そんな展開になるなんて思わないじゃないですか!?

 

ハムレットは1幕でほぼ終わり2幕に魔界転生がねじ込まれるという…。この広げまくった風呂敷を最後に御前試合(タイトル)に繋げた手腕は毛利さんさすがとしか言えません。「戦いの数だけ、秘められた物語がある-」このキャッチフレーズも、正直映画が1つの(2つの?)秘められた物語で終わってしまったので、残りの10人くらいの物語を舞台で明かしていたのもお見事でした。

以下、1人1人感想を書いていこうと思います。(ほんとに全員書くのでお好きな人に飛んでください!)

 

 

小松原烈山 (山本 亨)

なんか死ぬほど殺陣うまかった!!!!と思ったら髑髏城極の狸穴さんでした。観てるわ。お芝居の軽さと重さを自在に操っていて、この作品を象徴するような人。蓮十郎と奈奈を厳しくも優しく育てたんだなあと思うくらい2人がいい子なので、小松原家の行く末が悲し過ぎました。お芝居の重厚さと対比するような殺陣の身軽さよ…!後半の蓮十郎と清順との殺陣で半身ひねり跳びみたいな技で刀を弾いてた…凄かった…!

 

朝霧(AKANE LIV)

黒執事マダムレッド以来に拝見したAKANEさん。洋風なお顔立ちと和服が可愛すぎる。江戸時代じゃない。でもキャラも江戸時代じゃない笑

ガートルードはハムレットの中でもかなり共感できない役だったんですが、朝霧は全然気持ちわかる!!愛に狂い愛に生きた女性だったんだなあ…。前ちゃんとの日替わりネタのツッコミもいつも愛が溢れてて毎回楽しみでした。

 

原田貞之(廿浦裕介)

映画で良い声の審判だったつづさんが名前をゲットして舞台に登板してました。意外と白河さんとキャッキャしてコミカルだった…三太夫さんスカウトできるってことはそこそこ身分が高い??後述する波トークでもある三太夫さんとのコンビが好きすぎていつも笑ってました。

 

白河三太夫(井俣太良)

映画でもほとんど太良さんで、舞台でもほとんど太良さんだった!!笑

ハ弥斗と第一試合で闘うし、もっと怨恨があるかなあと思ったんだけど、力自慢のもみあげのおっさんでした。ここもう少し掘り下げて欲しかったな〜。なんで最初に持っていたのは鈍刀だったんだろう…強そうに見えて本当はあまり人を傷つけたくなかったのかな…なんて。

 

田宮源三(松本寛也)

家族が大事なお父さんで、ハ弥斗の必殺技を完成させる手伝いをしてくれた優しいお兄さん。リアクション芸が多すぎて、真面目に演技してる場面を探すのが困難だった(主に前半)(褒めてる)フォロワーさんに言われて気付いたけどカテコでも逆に眼帯してるし*2、もはやハ弥斗のアクスタの土台が源三さんだったミスが発生してたのも狙ってるのかなと思えるくらいでした笑

2幕は操られてて、ほとんど悪役だったのが地味に悲しい…狂四郎に斬られたわけだし朝霧みたいに正気取り戻してもいいじゃん…。

 

土御門月暗(梅津瑞樹)

顔が綺麗なヤバいお兄さん。日に日に高笑いがグレードアップしててどんどんヤバさが増して毎回楽しかったです。今回の黒幕とも言うべき存在ですが、基本的には狂四郎ともビジネスライクの関係に見えました。人のこと舐めてたから足元をすくわれた感じ。扇子で立ち回る前に一回術を込めてるらしいんだけど、いつやってたのか結局分かりませんでした…。梅津くん自身はアフトクの真面目だけどちょっとズレてる感じで好感度爆上がりしました!こういう人好きだ!初めましての刀剣男子だと思ってたら鴻上さん関連*3ドラえもんで観てた!どれだ!?GOZEN's ギャグはあまりにもあれ*4だったので心の中に閉まっておくね。

 

郷田半左衛門(井澤勇貴)

井澤の殺陣久しぶりに観たんですが*5、腰低いし太刀筋が綺麗でめちゃくちゃ良かったー!!!彼の凄いところは、遠くで見てもどこを斬っているか分かるところだよね。蔵人の頬を斬った時もどう斬ったか見えるのがすごい。殺陣だけ見るとめちゃくちゃ強そうなのに、めちゃくちゃ負けてる印象でかなしい…。単純に蔵人が強いだけな気がしてきた。月暗に操られても自らの手を斬りながら意識保って斬りつけるのかっこよすぎる。井澤って本当になんでもできるなあと改めて感じた公演でした。毎回舞台で実力を見せつけられるので、舞台で観るのが楽しみな役者さんです。

 

結城蔵人(前山剛久)

映画で沼から出てきたようなヌチョっとしたSE使われていたんですけど、結局頬の生傷の音だと気付いたのは、映画3回目の視聴時でした笑

蔵人は恐らく甲斐正に仕えてまだ数年のはず…?なのに熱い信頼関係で結ばれているのがエモい。術をかけられた後、自分を従者として普通に扱って、雇ってくれたのは甲斐正だけだったのかなあ。ハ弥斗も追い詰めるし、実はめちゃくちゃ腕が立つのではと思っています。狂四郎と甲斐正の次くらい?朝霧との絡みも甲斐正との絡みも毎回日替わりで変えてて微笑ましかった。台本を読んでわかる毛利さんの謎の無茶振り。彼も清順と同じく生き残るんですが、これからどう生きていくのか想像ができない。泣きながら甲斐正から形見を受け取る姿にいつも辛くなっていました。とりあえず前ちゃんのアルビノがどこの美少女だよってレベルでめちゃくちゃ綺麗だったので、イケメンは皆白髪にするといい。

 

望月甲斐正(波岡一喜)

映画舞台ともに影の主役でした!頭狂ってて最高のヴィラン。この人を倒すために戦っていたはずが、いつの間にか共闘している様はなんとなく「薄桜鬼 新選組炎舞録」を思い出しました。この展開大!好!物!2幕から良い人ぽくなるんですが、映画で江戸を毒ガス攻撃しようとしてたり、若い女の人とSMプレイしてたことは忘れないよ!本人もその辺全く反省してない!笑

甲斐正が1ミリも改正してないのに味方になる流れがめちゃくちゃ熱いなーと思います。「最後に余を仕留めるのじゃろう!」と言ってハ弥斗にハッパかける場面で泣いてしまう。むちゃくちゃだけど、朝霧や蔵人、ハ弥斗への接し方を見るに、愛はちゃんと持っていた人なのかな。また兄が愛がないことも生前の段階で知っていたのかなとも。甲斐正みたいな兄への嫉妬と享楽に溺れる人、自分に正直でとても好き*6。GOZENの作品の雰囲気は波岡さんの甲斐正によって作られたなあと思っています。

そして一人一言コーナーでの波トーク!!!そんなに通ってないのに東京大阪ともに引き当てたんですがめちゃくちゃ楽しかったー!波岡さんが好きな場面をベスト3からその場で再現させるという鬼畜コーナーです。

《東京》

第3位 少年社中コンビ(井俣さんと廿浦さん)の出逢って「ほらね」までのくだり

第2位 半左衛門だけ煉獄からお帰りなさいのくだり

第1位 田宮源三のリアクションセレクション(ハ弥斗と清順のことを勘違いする場面、初めて必殺技を大人数に向けて打つ場面)

《大阪》

第3位 ランクダウンした半左衛門煉獄からお帰りなさい&月暗がそれを全くコントロールできてないくだり

第2位 ランクダウンした田宮源三セレクション

第1位 おっぱいダンスを踊る奈奈w/八弥斗、半左衛門、ダンサーズ

大阪の第1位で5人でおっぱいダンスしてたんですが、楽しすぎたので円盤化してほしい…!本編のおっぱいダンスでも手拍子したかったなあ。波トーク、楽しすぎてオトクなカーテンコールでした。波岡さんの愛が詰まってた。

 

興津清順(上遠野太洸)

誰がなんと言おうとホレイショー。ホレイショー陰謀説ってハムレットをさらっと読んだら誰でも考えると思うんですが(思い込み)、清順はもう絶対陰謀とか考えられない!弱いけど力になりたくて空回りする憎めない奴!上遠野くん、初めて舞台で観ましたがハマり役でした。原作のハムレットよりさらに彼の一挙一動が物語を悲劇へと動かしているのは明白なのに、憎めないのは上遠野くんの魅力ゆえなのか。はっちゃんのことが好きで好きで仕方ないんだよね。彼の人生に少しでも関わりたいんだよね。最後に八弥斗との場面は日を追うごとに良くなっていってて、後半日程は号泣していました。

矢崎広のファンは清順みたいな気持ちって絶対持っていると私は思っていて、27歳くらいから「縁側で猫飼いながらボーーーっとしたい」って言っている彼に「こういう役が見たい!」とか「こういう舞台立って*7!」とか散々やんや言ってるんですよ。そういう人がファンになりがちなタイプの役者さんなんですね。でも、本当は本人がやりたいと思ってることに背中を押してあげたいだけなんです。だからあまり負担に思わずに好きなことしてくれたらいいな。要望を投げつけてるのは期待して信頼して見てみたいからで、まあ本当に縁側でボーーーっとしたいなら私はそれを応援したいとも思うんですよ。でもまだ早いし、本当はまだ内心色々演りたいんじゃないかな?なんて邪推してるわけです。なので、個人的に毛利さんがあの場面作ってくれて嬉しかった。ただ、矢崎さんの未来が八弥斗をなぞることのないようには願っています。笑

 

小松原奈奈(若月佑美)

乃木坂の子を舞台で観るのは4人目…?とかなんですが、芸達者な子が多いんですね。アイドル出身のなかで舞台で観ることが一番多いグループなんじゃないかな。若ちゃんはとにかく身長差萌えがすごかった…!矢崎さんものすけくんも結構細身のはずなんですが、それを上回る華奢さ…!ファンの人とトレブロしてる時に聞きましたがアイスばかり食べてるとか…だめだよ…女の子は身体冷やしたら…なんて老婆心ばかりよぎってました。1幕のオフィーリアの清らかさと2幕の激しさを順を追って場面ごとに段階的に丁寧に演じてくれたので、ころころ感情が変わっても突飛な印象はなかった*8です。アフトクの感じとかもサバサバしてるし、矢崎さんの塩対応にめげないし可愛い。この物語の軸が愛なだけあって矢崎さんの今まで演じたラブシーンの中で1番きゅんきゅんしました!本当ありがとうございました…!!

 

小松原蓮十郎(松村龍之介)

レアティーズ全然好きじゃないんですが、蓮十郎は本当に…本当に大好きだった…!

ハ弥斗のことは最初から認めてなかったけど、誠実に向き合えばきっと分かり合えたはず…!奈奈との冒頭の日替わりで「…長い付き合いだからな」って言う日があったんですけど、その後狂った奈奈に忘れられているのがしんどくて、その日替わりの日は1幕から泣いてました。父・烈山との闘いの場面も辛くていつも泣いていたんですが、ハ弥斗の気持ちまで慮っていて、なんて出来た奴なんだ…涙真っ直ぐで慈悲深くて、自分の信念を貫くこの作品で一番の人格者だと思います。

のすけブログを読んだら、小松原家で蓮十郎だけは煉獄へ行かない(恐らく天国)ということに気づき、余計にしんどかったです。

舞台『GOZEN-狂乱の剣-』大阪大千秋楽 | 松村龍之介オフィシャルブログ「之介道」Powered by Ameba

 

流狂四郎(元木聖也)

映画から物凄い存在感だった流狂四郎でしたが、まさか先代藩主、ハ弥斗の父だったとはトンデモ展開すぎて最初は受け止められませんでした…!笑 あともう単純にやばい奴すぎた。天魔王*9ですらもうちょっと慈悲のある天下統一するよ??きっと誰からも愛されずに育ったんでしょう。本当なら徳川を継ぐのはお前だったと恨み節を言われながら。彼の人生にとっては日本を制することだけが目標で、死んでからが本番だった。中盤でハ弥斗を追い詰めたのに殺さなかったのも、私は煉獄行きになると黄泉がえりで従えられないからかなと思ったけど、息子を殺してしまうことにちょっと迷いもあったらいいなと思います。最後に「ハ弥斗」と言って死んでしまうのも、伝わらない愛情がもしかしたらあったのかもしれないと思うと哀しかった。

聖也くんは1幕はほとんど瞬きしてない(すごい)し、2幕の衣装(装備?)は憧れの方に作ってもらったらしく動きやすいと言ってましたが、そうは全く見えない…けどどんどん最後の殺陣の動きが速くなるので本当に動きやすいのか聖也くんの運動能力が異常なのか()どちらか分かりませんでした。すごい体力で見応えのある殺陣だったなあ。

 

望月ハ弥斗(矢崎広)

推しである矢崎さんが最後に殺陣をしてから早5年…。元々は大江戸鍋で気になってからの里見八犬伝、どりじゃん、薄ミュ、神州天馬侠、薄ミュ、る・フェア、太一くん、好色一代男、薄ミュという時代劇と殺陣ものが多く…いやほんとに多いね???繰り返し観てずぶずぶ落ちたようなものなのですが、最近さっぱり殺陣をしなくなり*10、恋しくて待ちに待った久しぶりの殺陣のあるお芝居でした。元々剣術を習っていたといっても久しぶりの殺陣はいかがかなあと思っていたんですが、

 

ああ、私の好きな矢崎広はここにあったんだ…

 

と終わった後にしみじみ泣いてしまうほどに、最高でした。5年間会えなかった久しぶりの大好きな矢崎さんでした。いつも大好きですが、それとはまた違った好き…。矢崎さんはめちゃくちゃ運動神経が良くて頼りすぎていると板垣さんに指摘されたこともあるほどで*11、でも私はそんな運動神経で乗り切る矢崎さんをまた観たかったんだなあと思います。ハ弥斗はハムレットの通り弱くて迷っていて、悔やんで悩み苦しみながら前を向く、そんな役でした。本来なら絶対好きになれない役なんですが、やっぱり好きになってしまった。彼の弱さが魅力に見えるのは、矢崎さんのお芝居の為せる技だと思っています。そしてめちゃくちゃ声がいい。贔屓目ですが。

ハムレットは、何かを軸にした方がお芝居として絶対まとまると思っていて、どれを軸にするのかなと思っていたんですが、奈奈への愛かな、と。奈奈を起点に優柔不断で流されていた1人の男が自分で道を切り開くまでの物語になっていたと思います。これまで観てきた魅力も凝縮されていて、矢崎広ベストアルバム*12ってみんなで言ってたんですが、奈奈へのお芝居はこれまであまり観たことがなかった素敵さで!キュン死にした!土方篇のラブシーンより好き!いや土方さんはもう神格化されてますけど!!()

そして矢崎さんの魅力は舞台1作品の中で成長を演じられることだと私は思っていて、その魅力も余すところなく発揮されていました。私はミュージカルも重いストプレも好き。だけどこういうTHE・エンタメ!みたいなものが大好きなオタクなので。そもそも2.5好きだし。少年マンガの魅力と似ているので親和性は高いと思ってます。なのでまたこういう舞台にも出てほしいな。自分のことオジサンと言わずにまだまだ色々な役、色々なお芝居を演ってもらいたいです。だから私はまた明日から清順のように、あれやってこれやってと好き勝手に矢崎広という役者へ注文をつけるんだと思います。

*1:読み直してももちろん分からない

*2:眼帯がエセという伏線回収?

*3:虚構の劇団

*4:彼の心臓の強さはわかった

*5:井澤自身も久しぶりだったらしい

*6:ライオンキングでもスカーがめちゃくちゃ好き

*7:今回みたいな殺陣舞台なんて何度ご要望レター送ったことか

*8:19世紀に大流行した狂乱の場は奈奈の1幕の狂った感じが終わったら2幕みたいな感じのカバレッタが入って相手の男ぶっ刺すか相手の女刺して自害みたいな展開が多いので、狂乱の場としてはめちゃくちゃテンプレートだったりする

*9:髑髏城の七人©️劇団☆新感線

*10:時代劇はたまにあったけど

*11:マクベスパンフレットより

*12:お友達がインフルエンサーなおかげでアフトク毛利さんに晒されました…笑。でも本当にどの場面の矢崎さんが好きかでオススメの作品提供できるレベル!

GOZEN-純恋の剣-

ラスト15分、衝撃のクライマックスが待ち受けるー

 

GOZEN初日おめでとうございます。

試写会で観ていましたが、とうとう公開ということでネタバレしかない感想を書きたいと思います。初見が楽しいので観ていない人は絶対に絶対に読まないでください。

観終わった後もみんなでひたすらこの作品の話をしたんですが、久しぶりにこんなに観劇後に観た作品について話したかもしれない。好き嫌いあると思いますが、興味ある方はお友達と(これ結構大事)ぜひ!そして観終わったあと、なんでやねーんとざわつく心を鎮めるためにお茶でもお酒でも飲みに行くと、とてもいいと思います。

 

toei-movie-st.com

 

東映ムビ×ステ】とは、東映が仕掛ける新しいプロジェクト「ムービー(映画)とステージ(演劇)の挑戦的な融合」です。

 と、ある通り、映画と舞台で同じ世界の話を描く東映さんの試み第一弾です。

私は舞台で主演を務める矢崎さんのファンなので、他の方についてはふわっとしか知りません。

 

あらすじ(HPより)

まだ戦国の名残が残る、二代将軍・徳川秀忠の治世。

幕府の隠密・青山凛ノ介(犬飼貴丈)は、北陸の府月藩に潜入していた。

気性の激しい藩主・望月甲斐正(波岡一喜)が幕府への謀反を企てている疑惑があったのだ。

そして、その証拠となる書状が筆頭家老・神谷眞三郎(冨家規政)の元にあるという情報を掴んだ凛ノ介は、神谷が参列する祭りに出かける。そこで美しい娘・八重(優希美青)と出会う凛ノ介。

二人は瞬間的に惹かれ合うが、八重は他ならぬ神谷の娘であった。

さらに、隠密仲間の真咲一馬(久保田悠来)から、八重が不治の病で余命いくばくもないことを知らされる凛ノ介。

心を乱しながらも隠密としての使命を全うしようとするが、自分が隠密であることを八重に知られてしまう。

 

同じ頃、凛ノ介の正体を知った人物がもうひとりいた。八重との縁談が進んでいた府月藩士・寺脇甚八郎(武田航平)である。

偏執的かつ残忍な性格のこの侍は八重に邪な恋心を抱いており、凛ノ介を挑発。

ついに凛ノ介と甚八郎は、殿の前で武芸を競う「御前試合」に参加することになった。

だが、その御前試合とは隠密たちを炙り出して公開処刑するため、藩主・甲斐正が企んだ死の宴であった。

 

宿命を背負った剣士たちが集められていく。藩主と同じ姓を持つ謎の傾奇者・望月八弥斗(矢崎広)、二刀流の冷血漢・流狂四郎(元木聖也)、赤目の異形侍・結城蔵人(前山剛久)ら、あわせて8人。男たちの宿命が交差する中、八重への恋心を胸にした凛ノ介は何を選び、何を賭けるのか?

 

いやーーーあんなに映画館で「え、は?」って声が各所から聞こえたことはなかったわ。

 

全ての感想がラストに持っていかれるのですが、映画を見ずにネタバレを踏んでしまうあなたのために最初からちょっとずつ。

 

冒頭は徳川の世でこれから起きる事件みたいなものをひたすら立木ボイスで聞きます。めっちゃ特撮。いやこれ立木文彦さんじゃんさすが東映凄いなって思ってたら状況全く飲み込めないまま導入部始まってしまうので気をつけてください*1

 

 ここで説明が終わると青山くんのお話になります。同じ藩からスパイとしてやってきた2人(恋人同士?夫婦?)が殺されるのを間近で見てしまい、ちょっとトラウマな青山くん。彼らが残した貝の紋章をヒントを得て、居候先の赤松くんに誘われるがまま祭りに出かけます。赤松はいい奴。

 

この祭りで八重と出会うんだけど、めちゃくちゃ演歌のMVっぽい。アングル変えて何度も見れます。顔がいい。

八重は青山くんが潜り込みたかった神谷家の一人娘で、身体が弱くて、美香さん演じる*2継母にいじめられている。もう手の尽くしようがないので主治医の真咲先生から薬だと言われて阿片飲んでます。え、阿片…?真咲先生の鬼畜さが垣間見えます。

 

そして青山くんって、甚八郎さんと事あるごとに出会ってるんだけど、八重より柳の下で会ってるのではないかと思う。ロマンチックだね!甚八郎さんめっちゃクレイジーでとても良いです。武田航平くん、かっこいい役かチャラい感じの役しか観てなかったので、こういうクレイジーな役もとても似合うんだなあと思いました。髪の毛の匂い嗅ぐ系男子*3でした。

 

 そういえば登場人物に八が付いている人が多いんだけど、何故…?八人で御前試合するから…?

 

それは置いといて、神谷家に潜入するため挑んだ御前試合予選大会。ここに推しが出てくると踏んでたのにまさかのシード権を獲得していました。まじかよ、強いなハ弥斗…。流狂四郎さんという名前からしてヤバめのお兄さんと、勝って大喜びの白川三太夫さん(≒お茶目な井俣太良さん)だけ出てました。赤松くんが順調に勝ち進めているのをドキドキして観てるから、毎回真咲先生が居なくなるのを確認できない…。次回こそ…。

 

そして隠密して大事な書類をゲットした後バッタリ出会った八重とすったもんだあり、青山くんは八重のことで頭がいっぱいに。隠密業務が疎かになっていきます。その後決勝まで進んだ赤松くん(いい奴)と慰労会をしていたら、あっさり赤松くんが甚八郎の手下に斬られてしまいます。え、赤松くんーーー!!!(涙)

 

そして、この辺りで気づき始める。あ、赤松くんはマキューシオだったのか…と。

 

青山くんはさくっとティボルト(櫻井くん)を斬って、翌朝乳母から八重の手紙を受け取ります*4

八重はど変態幼馴染甚八*5と結婚させられそうになっており、自分を連れて逃げ出してほしいという。即向かう青山くん。この辺からもう自分が隠密だったことをどんどん忘れていく青山くん。

しかし柳の下には八重はおらず、いるのは甚八郎。八重を巡る争いの決着を御前試合でつけようと言う。御前試合までが思ったより長かった。

 

第1試合から順調に進んでいき、*6

 

いよいよ青山くんの出番!その前に!!推しの出番!!!

 

負けて運ばれていく郷田くん(井澤)を見つめる青山くん。「知り合いだったのですか?」と尋ねるハ弥斗。そして自分が実は甲斐正の甥っ子で高貴な生まれなことを話すハ弥斗。青山くんが好きな子を巡って争うことに気づいたハ弥斗*7は、自分は仇討ちで試合をするので、そんな青山くんが羨ましいという。お互いの健闘を祈り、別れる2人。推しが一番長く映る場面でしたありがとうございました!!

 

青山くんと甚八郎の試合。青山くんが負けたかと思われたが、一流剣・鎌風により見事甚八郎を斬り、大勝利。初めて鎌風を生で見られて興奮気味に鎌風の時間差攻撃について説明する甲斐正様*8

無事甚八郎との戦いを終え、薬で眠らせ運び込んだ真咲先生のお宅に走っていく青山くん*9

 

真咲先生が見つめる中、やっと会えた2人。そして、八重は黒幕(柳の下で会えなくした犯人)は真咲先生だと気づく。真咲先生、実は青山くんのことが好きだと吐露…え、え、え、ええええええええ!?!?!?

めちゃくちゃ仕事できるイケボでセクシーでかっこいいロレンス神父様ポジの真咲先生が???「好きな男を行かせるくらいならここで殺してやる(意訳)」的なことを言って襲いかかってきます。予想をはるかに超えた展開。映画館中で止まらないざわめき。それを普通に受けて立つ青山くん。うん、動揺とか全くせずにクールに受け止める、青山くんのそういうとこめちゃくちゃ素敵だと思う。そして始まるバトル。さっさと一流剣・鎌風をキメる青山くん。そのまま八重と転がった先で行われるキスシーン…*10。そして2人は家を後にして、見知らぬ土地へ旅立つのだった…。

可哀想な真咲先生と大事な神谷家の書類を残して旅立つ2人を見ながらのエンドロール。

そして物語は舞台へー

青山くんの知らぬところで開催される第四試合。甲斐正のお付きの小松原くん(松村龍之介くん)はなにやら第四試合に出場するハ弥斗に恨みがある模様。それぞれの思惑を抱えながら、御前試合はスタートする!

 

最後の場面でめっちゃくちゃかっこいい推しのドアップを観て終了でした。

鎧武では、ザックの次にメロン兄さんが好きな私。久保田さんやっぱイケボだわ〜〜と惚れ惚れしてた時にまさかの急展開で、頭が真っ白になりましたね。いや久しぶりにこんな体験したわ。楽しかった。

舞台版も俄然楽しみなGOZEN。ハムレットをベースにどんな物語が描かれるのか、また、映画版とどう絡み合うのか楽しみにしています!

 

*1:私は推しの登場時の内腿に気を取られてこの辺一切の記憶がありません

*2:初見ぜんっぜん気づかなかった…

*3:ノートル・ダムの鐘のフロロー筆頭

*4:3月にRJばっか観ていたので、私はこの辺りで「綺麗は汚い」が延々と流れています

*5:実はパリスだった

*6:ここで青山くんの同僚の郷田くん(井澤)が負けて死んでしまうんだけど、そもそも青山くんが大事な書類を郷田くんに預けていれば助かったのでは…。真咲先生、結局こんな書類いらなかった訳だし…。一番職務を忠実に全うしていた郷田くんなのに、青山くんの職務放棄により斬られてしまって悲しく思うのだった…

*7:青山くんは「大切な人のために」としか言ってないのに、恋だと断定できる察しの良いハ弥斗さん

*8:それにしてもいくらなんでも柳は斬られたこと気づいてなさすぎ

*9:八重の経緯についてはロミジュリをそのまま想像していただいければ多分大丈夫です

*10:なんかめっちゃ床でがっつりチューしてて、もう少し真咲先生と真咲先生に数分前まで惚れ惚れしてたのに失恋した私の気持ちを慮ってくれてもいいと思う

リーディング・シアター「レイモンド・カーヴァーの世界」

東京公演5/30と6/1に行きました。

tristone.co.jp

カーヴァーの小説は詩のように美しく、奥行きがある。言葉は極めてシンプルで平易だが、読み進めるうちに行間から溢れるさみしさの深さや広さに読者はすっかり飲み込まれてしまう。こんなに簡単な言葉でこんなに複雑な心情を描けるものかと感動する。どうしようもない男と女の、どうしようもないすれ違いや破綻を描いたこれらの作品群は、人生に疲れたことのある聴き手の心にそっと寄り添うだろう。

最近年に1度は難しい朗読劇に出演することになった矢崎さんの今年の朗読劇です。

学がなくて理解が乏しい私には1度では理解できず、申し訳ないのですが矢崎さんの朗読劇「菓子袋」「収集」についてのみ感想を述べたいと思います。

 

「菓子袋」

 

 レス(Les)はシカゴに本社がある教科書の出版社に勤めている。彼はロス・アンジェルスで開かれた西部出版業者協会の会合に出席した折、サクラメントにいる父親に二、三時間でも会ってみようかという気になった。父親はサクラメントの空港のゲートでレスを出迎え、二人は空港のラウンジに入った。

「相手はスタンリー・プロダクツの販売員だったんだ。とびっきりの美人というわけではないが、人好きのするところがあった」 父親はレスの母親と別れたいきさつを話した。

レスはシカゴ行きの機中で、父親からもらったみやげの菓子袋をバーに忘れてしまったことに気づく。

 

久しぶりに再会した父親から聞かされたのは、生々しい父と女の不倫についてだった…という話。この話についてのみ、初めから理解して聞くことができていました。登場人物が少なかったからかな…。

父親の不倫について微細に語られる場面が、矢崎さんの色気ダダ漏れで最高でした。最近渋めの声を使って演技するのをよく拝見してるのですが*1、色気がすごいのでこれから渋くなっていくのが楽しみ。また、浮気相手の演じ方がめちゃくちゃソランジュで、女中たち懐古しているフォロワーさんときゃっきゃ喜びました。また女性演らないかな、、、。

カーヴァーはいくらでも深読みできるので、あまりに淡々としている「僕(レス)」の今の家庭事情とか色々と思い巡らせていました。多分、あまり奥さんとはうまくいってないんだろうなあ…とか。菓子袋を持って帰ってもきっと妻は食べない、去年だって食べなかったのに、という台詞が最後にあるのですが、なんだか言い回しが気になって、原因はレスの浮気とかではなく病気なのかな…とかぐるぐるして切なくなっていたのですが、父親が自分の浮気話を「わかるだろ!?」と揚々と語っているので、やはりレスも浮気したのか現在進行形でしている状態で、それを父親は察知しているのかもしれません。

話終わりは少しノスタルジックな、切ない気持ちになるそんな話でした。

 

「収集」

 

失業中の「僕」はソファーに横になって雨の音を聞いていた。誰かがポーチを上がりドアをノックした。オーブリー・ベルと申します、ミセス・スレーターにあるものをお持ちしたんです、懸賞に当選なすったんですよ、と男は言った。ミセス・スレーターはもうここには住んでないことを「僕」は伝えるが、結局オーブリー・ベルを家の中に入れる。

W・H・オーデン初めて中国を訪れたとき、初めから終わりまでずっと室内履きを履いていたんですよ、うおのめのせいです、とオーブリー・ベルは言った。そしてケースから電気掃除機を取り出し、コンセントをみつけ動かし始めた。

リルケは成人してからはずっと、城から城へと移り住んでおりました。後援者たちがおったんですな、と彼は機械の唸りに負けないような大声で言った。それから緑の液体が5、6オンス入った瓶を持って台所に入り、その瓶を水道の水でいっぱいにした。コーヒー飲みますか、と「僕」は尋ねた。

引っ越してきたばかりのタイミングでやってきたおじさんが部屋を片付けて帰っていく、という摩訶不思議な話でした。

これ、タイトルが「収集」なんですよね。「清掃」とかメインで掃除してた「カーペット」とかではなく、集めることにフォーカスが当てられているのが意味深で怖かったです。

結局、オーブリー・ベルは何しに来たのか…「僕」にとっては掃除してくれた良いおじさんだけど、ミセス・スレーターにとっては…?なんて考えて恐ろしくなってました。矢崎さんの演じるオーブリー・ベルはとってもチャーミングでとってもあさステだったんですけどね笑

失業中の「僕」が気にしていた手紙も気になる。採用通知?の割には今住んでるところから遠そうだなあとか。

カーヴァー の中でも特に難しいとされるお話だったようですが、矢崎さんのコミカルな演じ分けによって、とても和やかな話になっていたと思います。

 

人の話を長いこと聞くのが苦手な私が、なんとか2回聞いて理解したカーヴァー でしたが、他の人ならもっとすとんと入ってくるのかもしれないくらいです。思ったより平易な言葉で構成されていました。

アフトクで谷さんがざっくりお話をまとめてくれるので、とても助かりました。あわせて役者さんたちの生の声が毎回聞けたのも幸せ。矢崎さんのお父さんの話は泣いたし、仲村トオルさんの海外で起きたトラブルの話は笑いました。

ピアノの音を聞きながら、声に耳をすます贅沢な時間でした。

*1:主にボブ

音楽劇ライムライト

ライムライトの魔力に抗えない男の美しい人生の物語でした。

 

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1914年、ロンドン。ミュージック・ホールのかつての人気者で今や落ちぶれた老芸人のカルヴェロ(石丸幹二)は、元舞台女優のオルソップ夫人(保坂知寿)が大家を務めるフラットで、酒浸りの日々を送っていた。

ある日カルヴェロは、ガス自殺を図ったバレリーナ、テリー(実咲凜音)を助ける。テリーは、自分にバレエを習わせるために姉が街娼をしていたことにショックを受け、脚が動かなくなっていた。 カルヴェロは、テリーを再び舞台に戻そうと懸命に支える。その甲斐もあり歩けるようになったテリーは、ついにエンパイア劇場のボダリンク氏(植本純米)が演出する舞台に復帰し、将来を嘱望されるまでになった。かつてほのかに想いを寄せたピアニストのネヴィル(矢崎広)とも再会する。テリーは、自分を支え再び舞台に立たせてくれたカルヴェロに求婚する。だが、若い二人を結び付けようと彼女の前からカルヴェロは姿を消してしまう。テリーはロンドン中を捜しまわりようやくカルヴェロと再会する。劇場支配人であるポスタント氏(吉野圭吾)が、カルヴェロのための舞台を企画しているので戻って来て欲しいと伝えるテリー。頑なに拒むカルヴェロであったが、熱心なテリーに突き動かされ、再起を賭けた舞台に挑むが・・・。

 

 初演は観ておらず、映画は昔々にさらっと観た程度で、矢崎さんが出演されるということで観た今回の再演でしたが、とても、とても素敵な作品でした。

以下各役者さん毎の感想です。

 

・舞城のどか

ガチのバレリーナさんかと思ったら宝塚の方だった…。宝塚って本当凄いですよね…。アンサンブルとしてはカルヴェロの5番目の奥さんが1番目立つのかもですが、個人的には2幕の妖精がすごすぎてびっくりしました…。テリーのライバルなのかと思ったら脇役でもニコニコしてるタイプの人だった…。浮気の場面が色気やばいなーと思いながら観てました。

 

佐藤洋介

個人的に今回の掘り出し人(失礼)です。ダンスが上手い。上手すぎて面白いことをすべて踊りでやろうとしていて本当に毎回爆笑していました。この人何者なんだろうと思ったら中学卒業して航海士になったという謎の経歴が出てきたのも気になるところ。ダンス関係ないやん。コロンビーヌの相手役も好きなんですが、ダントツのツボはカルヴェロのマネージャーのお付きの人です。クセが強すぎるアシスタントでいちいち動きが面白くて大好きでした。春のコントの動物とか、カルヴェロの影は人なのか?本当に??と思いながら観ていました。重力とか感じないタイプの人間なのかな???ぜひぜひまたどこかの舞台で観たいです。ロミジュリの死とかやりませんか?

 

・植本純米

ライムライトってカルヴェロが芸人なはずなのに脇を固める皆さんが面白い人ばかりなのはなんでだったんでしょう…wるひまでいう面白おじさん枠だった植本さん。オネエ系演出家のボダリングさんが1番インパクトありました。いつもアドリブが面白すぎてめちゃくちゃ笑ってました。矢崎さんと2人の群衆が毎回ちょっとずつ変わってて面白かったです。カテコで石丸さんのあと「矢崎!」ってかけ声してくれてて、ありがたやと思っていました。

 

保坂知寿

私と母の永遠のドナ保坂さん〜!今回は歌が少なくて、シャウトするような曲でもなかったので物足りなかった…。それでももうオルソップさんが好きで好きで好きで!カルヴェロは絶対オルソップさんと一緒になった方が良かった!彼を生涯理解して影で支え続けてくれたのはオルソップさんだと思ってます。サバサバしてるし、テリーのことも最初は偏見持ってるけど、まあ家賃も払ってなくてドア(矢崎広)も壊されて部屋から消えてたら疑うよね…。後半は良き理解者となってていい女だな〜〜と思っていました。ドッグファイトの時もそうだったので、クリエのイイオンナ枠は知寿姐さんとソニンちゃんなんだろうなと思っています。

 

・吉野圭吾

圭吾さんが前半めっちゃアンサンブルしてて「!?!????」という驚きが隠せず…。なんという贅沢舞台…!めちゃくちゃ踊るし、序盤の街灯との小芝居は何度か観て仕掛けが分かっても、とってもチャーミング。そしてポスタントさん…あまりにも泣けてしまうポスタントさん…。カルヴェロと若かりし頃にやった掛け合いを、後半のショーの前にも繰り返すのはずるい…。ポスタントさんにとってカルヴェロは情けをかけた存在、本当にそれだけだったんでしょうか。青春を、1番輝いていた時期を共に過ごした戦友であり、憧れだった。だからこそ、カルヴェロのために公演を行おうと思ったんじゃないでしょうか。彼の人生を自分もこれから辿る、その希望を託して。

「私たちは一生アマチュアです。それ以外になる前に人生は終わってしまう」

「アマチュアじいさんから、もう1人のアマチュアじいさんへ。健闘を祈る」

この場面が大好きでした。

 

矢崎広

なんと推しがクリエで3番手になりました!!!めでたい!!!出番量にびくびくしながら向かったんですが、前半もめちゃくちゃ出てきて、後半はネヴィル様だったので、満足度が高かったです。前半は新聞売り、ドア、昔の観客、ネヴィル、今の観客が主でした。

新聞売り、最初は嬉々として事件について話していたのに、戦争が近づくにつれてどんどん涙でくぐもっていくのが辛かった…。チャップリンは平和主義だったなあということを、ここやカルヴェロの台詞で思い出しました。

ドアはとりあえず全力で笑いを取りにいく矢崎さんwwwwオフマイクであんまり笑いがなくてもひたすらボケを積み重ねていくその度胸すごい。

昔の観客もひたすらオタクあるあるを積み重ねられてこっちが恥ずかしかった!なんでそんなにオタクの物真似上手なんだ!わたし矢崎さんの前で笑顔で対面したことほとんどないんですが*1、いつも「今回も笑顔で話せなかった…こわいって思われてたらどうしよう…」と反省していたのですが、矢崎さんのお芝居によって、彼にはきちんと緊張が伝わっていたことを知り安堵しました←  途中でこちら(客席)に盛り上がりを指示されるんですが、どうしたらいいか分かんなくて、ただ面白すぎて笑ってました

ネヴィルの回想はめちゃくちゃかっこよくて!テリーから見たネヴィルだから、この回想の通りじゃないんだろうなーと思ってたら、2幕ではもっとカッコ良かったです!(笑)1幕は一声しか歌わないんですが、あまりに上手くなってて震えました…

観客パート2、こちらは1人だけの観客役ですが、観ていてすごくすごく心が痛かった…。興味もなく関心もなく、カルヴェロを馬鹿にしている若者の演技がものすごく上手で、最後にただ「帰ろうぜ」としか言わないのにあまりにも惨めにさせて、本当に最高でした。小杉*2より嫌な奴かもしれない…。こういう役ももうちょっと観たいなあ…最近見てなかったから新鮮でした。

2幕から颯爽と登場したネヴィルは、完璧青年で!ちょっと内気で、でも真っ直ぐでひたすらに良い人でした。最初に会った時からテリーのことが好きで、テリーしか見ていない。でも音楽が鳴ると音楽に集中してしまう、そんなところも好きです。「軍人からのダンスの誘いは断れませんよ?」とか「一度でいいから好きと言って」とか甘い台詞オンパレードであまぴろ*3では絶対言わないのに〜〜とにやにやしてました。でも1番好きなのは、「目の前にいる」に対する「知ってるよ!」の言い方。これときめかせられる矢崎広は天才なんじゃないかと思う。歯の浮くような台詞も貴重で好きですが、何気ない台詞をときめかせられるのも本当にすごいと思います。途中まで、テリーがなぜカルヴェロに想いを寄せているのか理解できなかったネヴィルですが、後半はカルヴェロの理解者にもなり、大切に思っている。彼に未来の自分を見ているのかな、と思いました。最後、カルヴェロが亡くなる間際にテリーの方を涙をためたまま笑顔で促して、息を引き取ったカルヴェロに咽び泣くネヴィルに涙が止まりませんでした。カルヴェロの死に目にはネヴィルしか気づかなかった。そのことになにかの意味を持たせたくてしょうがないです。

また、今回明らかに歌がレベルアップしていて、スカピン現象が起きていました…!満田先生と石丸さんと共演するとミュージカル俳優!ディズニー!な歌い方になるので、この歌い方も極めてもらえたら嬉しいなーと思います。ポップスとかは普段の歌い方で聴きたいですけど。ミュージカルに出続けるなら、この歌い方で高音や声量伸ばせたら強いなあ。惚れ惚れしてました。

 

・実咲凜音

みりおんちゃんは宙組エリザベート以来です。歌が上手なトップさんだなーと思っていたので、今回たくさん聴けて嬉しい。バレエも上手でした…すごいな…。

テリーは才能があるのに依存型で、絶対メンタルトレーニングをもっとしっかりやった方がいいと思ってたんですが、カルヴェロがいなくなっても、死にそうになっていても、舞台に立てるようになっていたので、実はカルヴェロによって自立できるようになっていたんだなあ、と千秋楽に気づきました。そういえば大人になってしまったと、カルヴェロと再会した時に言っていましたね…。

テリーは田舎に家を買うのが幸せで、カルヴェロは旅をしながら2人で舞台に立つのが幸せ。この幸せへの軸のぶれが、2人が交わることはないことを示しているなーと思っていました。テリーはこれから、バレエをずっとやっていくとは思えなくて。きっとピークを過ぎたら引退して、田舎で暮らすんだろうなあ…。芸術では意外といるタイプの人。その横にネヴィルがいるかは分かりません。彼もカルヴェロと同じく、舞台で死ぬタイプの人間だと思うので。

 

石丸幹二

いつもの迫力満点の歌唱力を封印し、あくまでも1人のピークが過ぎた芸人を演じ切った石丸さん。あまりにも素晴らし過ぎてブラボーでした。カルヴェロのプライドや、知性、悲哀を生々しく演じていて、1幕の終わりから尋常じゃなく泣いていました。もちろん全部を共感することはできないんですが、私も似たようなことあったなーとか、それでも続ける意味、のようなものを問いかけられていた気がします。彼は芸人として生き、芸人として死にたかった。それはテリーにも変えられない、彼のさだめだったんだと思います。若さも実力もない、もはや執着の塊になったその中にある輝きを、観客は評価したのかなと最後の歓声に思いました。

私はなにかを死ぬまで続けられることは尊いことだと思っています。カルヴェロが死ぬまで芸人としてあり続けたのはとても羨ましく、カルヴェロの人生は眩しく見えました。

まるで石丸さんのためにあるような役。なんらかの形で認められてほしいと思います。

 

 

今年暫定1番好きな作品でした。

評価の分かれる部分もあるかと思いますが、1人の男の生涯を丁寧に描いていて、観客に委ねる部分も大きく、私はこの作品に向いているタイプの人間なんだなーと思います。矢崎さんを追いかけていると、自分からは手を出さない、けれど素敵な作品に出会えていて、これぞ追っかけの醍醐味だなーと思います。元々好きなタイプの作品に出るのも幸せですけどね(金銭的な面でも…笑)

矢崎さんにはいつかチャップリンの独裁者をやってほしいな〜〜、と夢が膨らみました。これはもう本当に願望でしかないです。あの演説、矢崎さんで観たいんですよね…。いつかチャップリン自身も演ってみて欲しいなと望まずにはいられなかった公演でした。

 


 

*1:そもそも対面する機会もほとんどないため、毎回緊張のピーク

*2:人間風車

*3:あさステ水曜日回のおまけコーナー

右まわりのおとこ

誰にでも普通にできることと、ちょっと他の人とは違うことがあって、そのちょっと違うことをそのまま抜き出した人たちが繰り出す不思議な話でした。

 

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これはストーリーに頼らない芝居なのか、それとも筋書きのあるダンスなのか?
まさしく、身体言語で演劇する新しいジャンルの舞台

建物入口から会場への導線*1以外は大好きなあうるすぽっとの、まさかの舞台上での観劇でした。舞台を3〜4列でぐるっと囲んでそれで200人も収容できるのがすごい。
ラッキーなことに1番前で観れることが多かったのでこの近い距離感を堪能しました。
女中たちのマダムシートに似ていたかもしれない。セットも女中たちに似ていたので、ぜひこのセットでもう一度観たいなあと思っていました。
 
話の内容は不思議の一言。
同じ部屋で4人が互いのことが見えないかのように暮らしています。
何か思いついても成し遂げられない男、規則正しいことしかしない女、右にしかまわれない男、目測を見誤る女。
どこかが抜け落ちている人たちとシナモンロールをめぐる小さな話。
ダンスで演劇といわれていましたが、思い描くようなダンスはあまりなく、近藤さんくらいだったような…。近藤さんの逆回転の動きがすごかったです。
皆動きをモチーフとして繰り返しているところがダンスだったんでしょうか…。あまり踊りに詳しくないので自信はないです。
効果音もBGMも全部役者の皆さんでされていたのが印象的でした。ロシア語の歌…
登場人物たちはみんなユーモラス。ちょっとこれは病院に行った方がいいかも?なレベルもありつつみんなユーモラス。矢崎さんは成し遂げられない男で、ほぼランニングシャツとパンツでした。あとは犬もされてたんですけど、それがうますぎてびっくりしました。タルコフスキー飼いたい…。
 私が好きなのは千葉さんの見誤る女。舞台上のトラブルも見誤りながら回収していたのがお見事でした。
私はズレたり失敗したりしょっちゅうだけど、絶対人のせいにはしない。あははと笑って、全部受け止めるの。そうしたらこんな私だって愛せるようになるんだから
この台詞が大好きなので、自分の中に刻んでおこうと思います。
 
自分語りになりますが、私は小さい頃1日の半分くらいはぼーっとしているような子どもで、考えごとに集中して人の話を聞くことがとても苦手でした。
何を考えてたのか今となってはよく分からないけど、この世の中の不思議とか、何に感動するのかとか、神さまっているのかなとかそういうことを考えていたような気がします。
先生から呼ばれてもあまりにも反応しないものだから、つけられたあだ名はフロル星人*2。宇宙と交信しているとからかわれていました。
大人になるにつれ、今流行りの同調圧力というか、こういう風にしないと変なんだなっていうボーダーラインを読めるようになって、「普通」の中に溶け込むことができるようになって。
でもあのまま、あの時のままを許容していたら私はもっと違った私だったのかもしれない。そんなことを思ったお芝居でした。
 
 
 

*1:2階といいつつ階段であがると4階分…エレベーターは来ません

*2:星新一著「おみやげ」の登場人物

ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」再演〈BLUE〉

終わらない青春を一緒に過ごせた楽しい2年間でした。

推しである矢崎さんの出演が決まってから、PV撮影、初演、TENTH、コンサート、再演と観客役として盛り上がって、毎回とてもとても楽しかった。

初演、コンサートの記事はこちら

 

 

k1mg.hatenablog.com

k1mg.hatenablog.com

 

 

 

今回は再演〈BLUE〉をメインに書こうと思います。WHITEも観たのですが、初演と大きな違いをあまり見付けられず…私が観る回数が少なすぎるからなんですけど。初演の時とほぼ同じ感想でした。

BLUEは結局グループとして一番好きなチームに。個人だけで言えばREDとかWHITEに出演している方も大好きなんですが、グループとしての絆が一番目に見える。1人1人が誰かの為に動いているように感じたBLUEがとても好きでした。

長くなるので季節ごとに1人ずつ書いていきます。

 

〈春〉トミー(伊礼彼方)

もうめっちゃ好き!!!!です!!!

初めて観た時から、ずっと心奪われていました。伊礼さんって私の見た作品ではヒールが多い印象なんですが、今回もヒールです(笑)

でも、誇り高きワルでめっちゃくちゃかっこいい。映画で観たトミーと近くて、映画ではトミーが一番かっこいいと思っていた私にとってはめちゃくちゃタイプドストライクでした。

秋の場面、他のグループのトミーは大体ジップの前でしゅんとしているのに、伊礼トミーは飄々としていて。伊礼さん自身も伊礼彼方の部屋で言ってましたが、突っぱねてかっこつけて最後まで折れないトミーが悲しい。もう自分では引っ込みがつかないところまで来てしまっている感じ。春と夏、確かに彼はチームを引っ張っていた、回していた。独り善がりでなく、そのリーダーシップがしっかり見えるのも伊礼トミーの特徴だと思いました。

cry for meでひとつになった時も、最後に入ったトミーがコンダクター的な役割を果たして音楽を作っているんです。「もっと、もっと、そうだもっと!」とフランキー、ボブ、ニックの最大値を引き出していたトミーは紛れもなくリーダーだった。あの音楽は最高でした。詳しくは夏に語ります。

トミーはトミーなりにグループをメンバーを愛していたんだと思います。その方向が捻くれているだけで。自身の経験からきっとファンだったら私はトミーを許せない自信があるんですけど、それでもRAG DOLLの「この賞をくれるのは、一般大衆だからだ」にはぼろぼろ泣いてしまいました。伊礼トミーは観客のこともちゃんと愛してくれている。ほんとどうしようもないクズだと思うんですけど、その不器用な生き方に強烈に惹かれました。

 

 〈夏〉ボブ(矢崎広

この人を追いかけてここまで来たんだなあと、感慨深い想いです。

2年前のボブで急成長を遂げてからの再演。まず、ものすごくものすごく歌が進化していて、今回は初演の藤岡さんが歌っていた最高音パートを任されていました。ものすごい音圧でした。DAWNを初めて再演で聴いた時、あまりにも声量も歌声もパワーアップしていてびっくりして泣きました。本当に矢崎さんには感服です。わたしたちの知らないところでどれほどの努力をしていたんだろう…。

そして1番なにがどう変わったかと言うと、この2年でcry for meがお芝居の肝としてとても大事な場面になっていました。初演の赤、私が泣いたのは矢崎広という役者がクリエの舞台でcry for meを歌い上げるという事実でした。私はお芝居というより中の人ありきで感動していて。それは今回もそうです。でも今回のcry for meはその感動を遥かに上回ってきた。歌はめちゃくちゃに上達しています。今回はそこに皆が納得して乗っかってきてくれる。音が重なって音楽になっていく。一つになって、最高の瞬間になる。うまく言えないんですが、音楽をやってきた人でこの場面が刺さらない人、いないんじゃないでしょうか。

音楽が楽しい瞬間は、1人でピアノの前にいる瞬間じゃなくて。人前で拍手をもらった時でもなくて。小さな部屋で誰かと歌ったり演奏を重ねた時だったりする。

ラストシーンでフランキーが語る最高の瞬間は、cry for meなんだと思います。街灯の下ではないけど、きっとBLUEは最高の瞬間をcry for meに持ってきている気がする。他のチームではそこまで思わなかったので、この場面の衝撃は強く残りました。

矢崎ボブはクリエでは赤よりもクールだったと思います。特にフランキーの前で。ツアーに出て徐々に熱くなっていくのが楽しかった。後半はBLUE全体どんどん熱量が上がって見応えがありまくりました。

赤の時と比べると、青のボブは「フランキーのため」という意志を強く感じます。序盤にボブ・クルーから言われた「誰のために書けばいいか」ボブはフランキーのために書いている。あの握手に込められた意味を考えながら、フランキーを支えている。

彼が「誰かと一緒にいる方が楽しい」と、とても良い表情で言うのはフランキーがいないoh what a nightの後。天才で孤独だったボブが誰かと一緒にいることの楽しさを徐々に感じ始めた時にはニックとトミーがいた。「スポットライトの下がしっくりこなかった」ボブが、それでもスポットライトの下にいくのはみんながいる時なんです。口ではどんなメンバーでもいいと言いながら、彼は途中でグループから抜けてしまう。でも、オリジナルのフォーシーズンズで歌えるならスポットライトの中でも演じられる、その人間らしさが好きです。

だから秋の場面、伊礼トミーに対してボブはもう泣きそうになりながら怒る。許せないし、なんで…?っていうトミーへの失望もあるように見えました。そのタイミングは変わったりしていましたが、どんどん崩れていくグループの中で、フランキーを支えなければという意志で動いていたところは変わらなかったなあと思います。

文化的成長のため、兄貴みたいな存在、そして親友だったニック。きっとボブはニックのことを本当に親友だと思っていたんだと思います。だからstayは本当に辛そうだったし、観ているこっちも辛かった。ボブのことだからビジネスとプライベートは全く切り分けていて、フランキーとの取引もビジネスの一環。そこにニックが傷つくなんて思いもしなかったんだと思う。フランキーを支えなきゃ、と必死になるあまりに大事な親友を失ってしまったボブ。しかし、それをフランキーには見せない。stayでぼろぼろに歌えなくなっても、opus 17でニックの面影をじっと見ていても、フランキーには大丈夫だから!と支えてみせる。

矢崎さんは誰かを支える役がめちゃくちゃ上手いなあとつくづく思いました。自分の悲しみも自責の念も全部フランキーには見せず、ただ前を向かせる。can't take my eyes〜の時も、あんなに世に出すのに苦労したのに、フランキーが見ても軽く合図するだけ。そしてフランキーの背中に「フランキー、君の曲だ」と指を指して静かに呟き、握手した右手を見ながら去って行く

フランキーも覚えてないかもしれない若い頃の夢。ホーンセクション全部入れてもいいかも!という提案をボブは本当に叶えてしまう。なんて人なんだ…。

矢崎さんが作り上げた、ボブの垣間見える人間らしさと支えようとする強さが大好きでした。

 

〈秋〉ニック(spi)

今回1番特筆すべきはニックだったかもしれないです。音域も役どころも彼には合わないのかもしれませんが、私はとっても好きでした。なんかもう別にミュージカルに私はそんなに歌を求めてないのかもしれない。芝居が面白ければそれでいいやーって思い始めたのもspiさんのニックの影響です。というのはspiさんが下手とかではなく(笑)

コンサートで聴いたspiさんのBeggin'が最高だったので、それが聴けない本公演なんて…と思っていたのを見事に覆されたからです。

私はニックは、ずっと前に出ることのない不満を溜め込んだ悲しい人だと思っていました。年上だからなのか、きっと最初の頃からあった不満が膨らんで、爆発した悲しい人、そう思っていました。

spiさんのニックは、楽しそうだった。100%満足しているわけじゃないけど、楽しいし、このままでいいかなーっていう、転職するか迷ってる人くらいの軽さ*1。特に前半のみんなといる時のニックが温かいんですよね。

再演からニックはトミーのことを「相棒」と呼ぶんですが、本当に相棒っぽい。トミーとは相棒でボブとは親友でフランキーとは兄弟って感じ。バックコーラスでトミーの悪ふざけに乗っちゃうし、ボブと車の話する時も絶対お客さんを笑わせようとしてくるし笑

本来は環境が変わるのが嫌なタイプなんだろうな、と。それが、秋に一変する。ずっと引っかかっていたことが積もって、つい出た言葉が「家に帰りたい」なんだと思います。再演はこの直前のstayの場面でニックが決定的に傷つく時、観客から笑いが起きるようになりました。多分あえて笑わせるように仕掛けられていて、笑われていればいるほど、ニックの自尊心がずたずたになるのを観客が目の当たりにする構図になっていました。ニックが石鹸が見えないくらい小さい、そんな些細なことの積み重なりに惨めさを感じて、もう居なくなりたいと思うこと。それは多分ニックの不満の表層部でしかないと思うんですけど、彼が自尊心を保てるギリギリのラインだったのかな、と。これ以上言うと余計に惨めだから。

責めるボブに「彼の気を引いたぞ!やあ、ボブ。…久しぶり」と今にも泣きそうな笑顔のニックにこちらが泣きそうでした。そして笑顔で別れた後、たまに2人に背を向けてからめちゃくちゃ泣いている回があって、そこで大号泣。上手の端から泣いているニック越しに苦悩するボブを観るのがとても好きでした。たしかに親友だったはずの2人が、どこかでボタンを掛け違えた切なさをいつもヒリヒリと感じていました。

BLUEは各メンバーがニックとの一場面一場面をとても大事にしていて、そこがグループとしての絆をより深く見せていたのかもしれません。

 

〈冬〉フランキー(中川晃教)

BLUEのフランキーはやんちゃでちょっと口が悪くて、怒りやすく甘えん坊な印象でした。

白ではもう少し大人でクールにしている気がする。

特に秋の場面は毎回めちゃくちゃキレていて、トミーが蹴った椅子をどこまででも拾いにいって毎回震えるほど怒っていました。いつだったかトミーとニックの言い争いに被せて何か話そうとしていて(間違えたのかあえてなのか分かりませんが)アドリブなのでトミーとニックがまるで無視して2人で言い争い続けた回があって。余計にこの2人の関係が浮き彫りになってとても好きでした。あっきーはなんだかトラブルも強みに変えるようなパワーがあって、底知れないなあと思います。

あと、初演の時にフランシーヌの死の場面とニックの死の場面、あまり泣くことはなかったのですが今回は大体泣いていました。まりゑさんのフランシーヌが階段の上で天使のようで尊かったのと、私がspiニックが大好きだったこともありますが、なんだかあっきーのフランキーの演技もちょっと変わったような気がしています。

やはり今はあっきーのフランキーがあってのジャージー・ボーイズで、これからのことを考えると他のフランキーが出なければとも思うんですが、同時にあっきーの声を存分に浴びれる今のこの時間に居合わせたことを幸せに思います。

 

 

4人個々については以上です。

BLUE全体通して好きだったところも、たくさんあります。

例えば「ジャージー式の契約」の重要性。

ボブが初めて会った時に何気なく差し出した手を誰も取らないニュージャージーの3人。加入して初めて握手をして、ボブはその後のフランキーとの握手で、初めてその重さを知る。私たちもボブの人生を通して握手の重さに触れられるところが好きでした。決めどころに握手は必ず入ってくるので、BLUEの4人の契約を丁寧に演じているところがとても好きでした。

あとは、cry  for meを最高の瞬間として持ってきているところ、秋の場面のヒリヒリするような空気感、そして、who loves youでみんながまたひとつになる温度感。とにかくBLUEはアイコンタクトが多かった。そして台詞以外のところでもなにか話していることが多い。ミュージカルで、台詞も決まっている中で、そういう些細なところで4人の関係性を補完できたなあ、と思います。カーテンコールもいつも大爆笑だった。一発芸*2を矢崎さんが披露したり、伊礼さんとspiさんがお詫びタオル*3でひたすらふざけていたり。あっきーさんもoh what a nightでシャカリキに踊ってついていけてない矢崎さんを困らせたり…笑

大阪であった伊礼彼方の部屋もものすごく内容の濃い1時間半で、とにかく毎回楽しいことばかりでした。

 

千穐楽にはCD発売も決まり、本当ーーーーーっに嬉しかったです。なんかもう客席でひたすら叫んだ気がする…。なんらかの形に残って欲しいと初演から散々リクエストしていてようやく叶いました…。関係各社の皆様に心より御礼申し上げます。特に東宝の方々の苦労は計り知れません。そしてそして寛大な心を見せてくれてありがとうボブ・ゴーディオ様。いつか海宝さん、矢崎さんのボブをご本人が見てくれたらいいなあと思っています。

 

本当に矢崎さんがボブをやってくれて良かった。きっとボブは矢崎さんにとっても私たちファンにとってもずっと思い出に残る役なのではと思っています。この作品に出会えたこと、この作品の観客になれたこと、心から感謝しています。ジャージー・ボーイズという作品は私にとってWho loves you の歌詞そのものでした。

 

 

 

*1:どうでもいいですが、今の私自身ともめちゃくちゃリンクしてます

*2:彼はとにかく一発屋芸人のモノマネをひたすらしていた

*3:9/30公演が台風で中止になり振替公演のチケ代の差額で配布されたタオル