sognamo insieme

君を夏の日に例えようか

クレシダ

平幹二朗という俳優を生で観ることができるというのは、現代に生きる上でとても幸せなことだと私は思っています。

2年ぶりの平幹二朗さんでした。「蒼の乱」、その前が劇団四季の「鹿鳴館」。初見の鹿鳴館の影山伯爵で撃ち抜かれてしまい、未だにこの俳優さんよりお芝居が上手なお方を私は知りません。

あっちゃんと碓井くんという最近気になるお二人と平さんということ、サクッと最前が取れてしまったことで軽い気持ちで観に行ったのですが、なかなかどうしてめちゃくちゃ好きな作品でした。

あらすじ

1630年代頃のロンドン、グローブ座。

劇団は男性によってのみ構成され、女役は若い少年俳優が演じていた時代。

かつての名優シャンクは、晩年、ここの演技指導者になっていた。そこへ養成所から少年スティーヴンが入所を希望する。

彼の話し方は非常に幼く、シャンクは入所を断るのだが……。

『トロイラスとクレシダ』の上演を控え、ヒロインを演じることとなったスティーヴン。その裏に隠された思惑とは?

そしてシャンクによる猛レッスンが始まる……。

感想

名優シャンクがただの素敵な先生ではなかったのが、とても人間的に魅力的でした。お金にだらしなくて勝手に架空の生徒を名簿に入れて(グッドナイト・ゴートゥーベッドくんなど笑)賃金を着服するし、ハニーの高価なネックレスを奪い取るし、くされジジイ感がとてもリアル。平さんのこんなコミカルな演技を観たのが初めてで、重みのある演技をしながらこんなに笑わせてくれるのかと、不思議な気持ちでした。

そんな先生に悪態をつきながらも嫌いになれない生徒たちも自分の大学時代を思い出しながら、あるあるだなあと思っていました。

1幕はそんなグローブ座の仲間たちとのドタバタ劇なんですが、2幕から芸術について、継承について考えさせられるお芝居だったのがとても好みで。

まるで棒だったスティーヴンにシャンクが熱く指導するようになる場面はガラスの仮面さながらでした。

才能が開花し、民衆が舞台上に求めてるものが分かるスティーヴンと、伝統を重んじるシャンクの衝突する後半は今にも通じるテーマなので、ぐるぐると考えています。

ただ伝統の上に新しいものを作らないとそれは全くの別物になる、だからシャンクから受け継いだスティーヴンの作るものは新しいものとして受け入れられるようになったのだと、私は解釈しています。

全ての芸術はそういう風に出来ているのに、演劇だけそうではないなあと思っていたんですが、私が知らないだけで演劇にもあったんだなあというのが、改めての発見でした。

高橋洋さんのディッキーとシャンクが過去を振り返って語る場面が本当に素晴らしくて…

ディッキーが少年俳優だったことって前半はあまり感じられないんですが、後半のこの場面でビシビシ伝わってくるんですよねー。

高橋洋さんはフェードルの時もお上手だと思っていましたが、今回のディッキーの方が好きです。メガネ姿も美しいし、後半もとても好き。

美しさでいうなら橋本淳のハニーが群を抜いていました。絶対碓井くんが1番美人だと思っていたんですが、あっちゃんがダントツだったなあ…。

お顔というより立ち姿や姿勢があまりにも綺麗だったんですよね。ピンと伸びた背筋や足先まで美しい立ち姿、力の抜けたように見える指先もめちゃくちゃ綺麗で、もう女として完全敗北でした。

ハニーの気位の高さやジェンダーフリーな部分、スティーヴンというライバルに嫉妬しながらも気になって真似してしまう生真面目さや後半の少年俳優としての終わりを告げられた時の表情がすごく素敵でした。よりによってディッキーに終わりを告げられるハニー。彼らは未来の自分と過去の自分を重ね合わせていて、観ていて辛い場面でした。

やっぱり良い俳優ですよね、あっちゃん。個人的に世迷言のあっちゃんも好きだったので、金髪姿が好みなのかもしれません。この舞台の時代に生まれていたらハニーを追いかけていたんだろうなあ…。自分が少年俳優やカストラートにお金をつぎ込むご婦人方になっていたであろう想像は容易につきます。

橋本淳さんの良い意味で役の染まれる部分がすごく好きです。観るたびに印象が変わりますね…!

今回でさらに骨抜きにされたので、これからも観続けていきたい俳優さんです。

スティーヴン役の浅利さんがこのお話の中心なんですが、最初の田舎の素人から成長していく過程が凄まじく上手でした。棒読みなのに何か光るものを感じる演技ってどうやってやってるんでしょうか…。

今まで指導をサボっていたはずのシャンクがつい指導に熱がこもる理由が分かるんですよね。

スティーヴンの実直に芝居に取り組んでいる部分や、ハニーへの恋心がすごく可愛らしくて、孫を見るような気持ちで愛でていました。おばあちゃんになったらスティーヴンみたいな孫が欲しいです。かわいい。あと女役が大竹しのぶさんに似ているような…気がします笑

平幹二朗さんに戻りますが、1幕はあくまで軽妙なお芝居が多く、シャンクの憎めない人柄をご本人なのかなと思うくらいのリアリティで演じられているのですが、2幕からの求心力が凄まじいです。シャンクの本質は伝統を重んじる芸術家。平さんの語られる台詞ひとつひとつが観客に訴えかけるもので、私たちに芸術家としての生き様を魅せてくださってました。

平さんの凄いところは難解な台詞でも明瞭に、伝わるように演技されるところだと思います。

こんなぺーぺーの若僧が平さんの凄さを語ったところでたかが知れてしまうのでこの辺で控えますが、演技にバックグラウンドを感じられるお芝居をする俳優さんが私は大好きなんです。

今年で83歳というご年齢を感じさせない平さんの演技をシアタートラムという小さなシェルターのような空間で観れて、私は幸せものです。今後も出来る限り拝見できるよう頑張りたいです…!(金銭面を)

碓井くん藤木さんのグーフィーとトリジ、花王さんのジョンのグローブ座メンバーも賑やかで可愛くて、シャンクを慕っている空気感が凄く好きでした。

この舞台全体に漂うあたたかな雰囲気とメッセージ性の強さ。そしてシェイクスピアのエッセンス。シアタートラムという日常と乖離しやすい素敵な劇場で。

最高でした。

東京千秋楽おめでとうございました。

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宮本武蔵(完全版)

「殺陣が好き、時代物が好きって言ってるけど、刀を振るうことがどういうことか君ちゃんと分かってるの?」

と遠回しに問われまくった舞台でした。

薄ミュ(LIVEだけど)とつむ鴨の間に挟んで観てしまったので、余計にぐるぐると考えてしまいます。

あらすじ

伝説の剣豪として世に名を知らしめるも、その内面は臆病な男、宮本武蔵

色々と疲れの溜まった武蔵は、湯治のため山奥の宿を訪れる。そこには様々な面々と出会うこととなる。

私たちが考える理想の武蔵像からかけ離れた主人公、宮本武蔵は皆から偽物ではないかと疑われる。

証明のしようもないが、本物と認められたら命を狙われる、しかし偽物と思われても面白くない。

疑心暗鬼の中で、武蔵に恨みをもつ者、討ち取って名を上げたい者、さまざまな思惑が重なって、物語は思いもよらない方向へ。

最後までヒーローらしさも小次郎との決闘もなく、そのだらしなさが笑いを誘う現代会話劇。

“本当の宮本武蔵は、こんなんだったのではないか!?”

感想

実際あらすじ詐欺も甚だしいくらいに、毒を含んだ舞台でした。嘘はついてないけど。

ござる三段活用に「え、あー、うん」の応酬で日常と地続きのお芝居が延々と続きます。

本当にあるあるな場面の連続で、違うところは皆「侍」だということ。「侍」が生きる時代の話だということでした。

ここで語られる宮本武蔵という人間は、コミュニケーション能力が低く、精神年齢が幼い1人の若者でした。「脱力系」とは個人的には思わなかったです。息を吸うように人を殺し、その原因を相手のせいにすることで精神状態を保っていた青年だと思っていました。

この舞台に出てくる宮本武蔵佐々木小次郎も、あと千代も、人を殺したことのある人間たちはみんな相手のせいにしてるんですよね。

「殺そうとするから」「切りかかってきたから」だから『殺す』

そういう風にしないと人ってメンタル保てないんじゃないの?と言われていた気がします。

たしかに、今兵士のPTSDって有名な話ですし、防衛機制していかないと、当時も精神的に生き抜けなかったのかもしれないです。

ただ、私が今まで色んな作品で観てきた武士は相手の人生を背負って、覚悟を決めて生きていたから、その違いが受け止めにくい部分ではありました。

当たり前のように受け止めていたその志は本当に皆持っていたのか??と問われている気分でした。

考えさせられると同時に腹立たしい気持ちも抱えたのは、図星を指されたような感じがしたからかもしれません。

主演の山田くん、当て書きかと思うような宮本武蔵でした。イタズラなkissしか知らなかったので、本当に素晴らしい俳優さんなんだとびっくり。

イタkiss当時から雰囲気が矢崎さんと似ていると思っていたんですが、そこを特にフィーチャーされることはなくて残念。

現代の若者っぽさ、潜んでいる幼さとサイコパスな感じがものすごくリアル。だからすごく怖かったです。

ラストシーンは毎回山田くんの演技で観客の受け止め方が変わるので、今日はどっちだろうとハラハラしていました。

色んな意見があると思いますが、私は初見の時の印象が「伊織を斬ってない」だったので、そうだったらいいなあと思っています。

じゃないと長年一緒にいた伊織ってなんだったの、と。人が人に与えられる影響ってそんなにないものなの、と悲しくなってしまうので。

山田くんは本当に日毎に印象が変わるので「今日は斬った気がする」「今日は斬ってない」と感想を言い合ってました笑

矢崎さんの演じていた佐々木小次郎は、飄々として摑みどころがない感じ。久しぶりにこういう温度の低い役を見た気がします。前は結構やっていた気がするんですが、最近は熱い男が多かったので。

営業マンによくこういう人いるわって思いながら見ていました。読めないし、自分中心で物事を考えることになんの罪悪感もないタイプだから個人的には関わるのが結構苦手な人種なんですが(笑)こういう役柄も演じられる役者さんだったのを改めて思い出しました。

そして前作JBのボブをこの感じで演じなかったのはやっぱりあえてなんだろうなあ、と1人ニマニマしてました笑

なんかすごいサービスシーンが多くて、肌色多めだったので、毎回じっくり堪能してました。こんなによく脱ぐ俳優さんって他にいるんでしょうか??笑

ありがたいですけど!ありがたいですけど!!

私自身の傾向として小劇場のお芝居ってハマるかハマらないかにはっきり分かれるんですが、今回はどっちにも転ばなかったのである意味珍しかったです。結局巌流島どうしたの?っていうところはずっと引っかかってるんですが。そういうの考えるの野暮なんでしょうか?

殺陣モノが好きな私に一石を投じられた舞台でした。

しかしやっぱり侍は相手の人生を背負いながら生きて欲しい。夢物語なのかもしれないけど。結局つむ鴨で戦う男たちに涙しながら「矢崎広の殺陣が見たいなあ…」と相も変わらず願う私なのでした。

矢崎広と土方歳三〜ミュージカル薄桜鬼〜

自分が成仏したら、この記事を書こうと思っていました。

成仏というのは、矢崎さんが土方さんを辞めた際に仰っていた言葉で、つまるところ自分の気持ちを昇華させられたら、こういった文章を書こうと思っていました。

 

2016年8月17日、私はとうとう気持ちに整理をつけることができました。

それはさよならとお別れすることで、しかし本心では望んでいた終わりで、楽しかった祭とつらかった2年の終わりでもありました。

 

2014年の10月1日、ミュージカル薄桜鬼の次回作から松田凌斎藤一矢崎広土方歳三を見れないことが決まりました。

本当に自分でも笑ってしまうんですが、泣いて泣いて泣きすぎて、豆腐しか食べられなくて(笑)

ずっと予感はしていたのに、いなくなる心づもりをしていなかった私が悪いんですが、発売されたばかりの風間篇を見返すこともつらく、矢崎さんに対しての憤りすら感じて、塞ぎ込んでしまっていました。

彼は働き者なので、その後すぐからジャンヌダルクでアランソン様を立派に演じており、それはそれは素晴らしい演技で傷心中の私を元気にさせてくれました。

矢崎さんによって凹み矢崎さんによって励まされていたわけです(笑)

 

私にとって矢崎さんの演じた役で1番好きな役で、彼の演技の凄さを感じた役が土方歳三でした。

あまりにもしっくり演じすぎていて、私の中では、「矢崎広」と「矢崎広が演じる土方歳三」がイコールにならないくらいでした。同じ人だと思えないんです。全然意味わからないかもしれませんが。

矢崎さんの魅力を知ったのはるひまや鍋ですが、ファンになる大きなきっかけとなったのは土方さんです。これはもう断言出来ます。

沖田篇で「これ誰?」となって、土方篇で目が離せなくなった。

怒涛の展開の中、矢崎土方の凛とした姿勢に心を打たれました。彼の全てを背負って突き進む姿勢や想いに、真っ直ぐな目に、これまで観てきた舞台のどの役よりも共鳴し、好きになりました。

矢崎さんの土方歳三は本当に武士として生きてきたかのように見えるんです。彼の背中には新選組や血や砂埃が見える。背負っているものが大きすぎて、潰れそうで、それでも前に突き進んでいる。「舞台で生きている」という表現を初めて実感を持って観れた役でした。

 

台詞の一言一言が自分の指針になっている部分もたくさんあって、私生活で本当に苦しい時期や迷っている時期、土方篇のCDやDVDを延々と聴いて自分を奮い立たせていました。

「私は私の信じる道を突き進んでいこう」自分の人生に対してそう思えるようになったのは、矢崎さんの土方さんのおかげです。

矢崎さんの土方さんを見れないということは、自分の人生の師の死に値するくらいつらいことでした。

せめて、最後だと知って観たかった。矢崎さんの口から土方歳三に対しての想いを聞きたかった。しかし、それは叶うことなくどんどんと月日は流れて行きました。

 

沖田篇を初めて観た時に「このミュージカルが散り終わるまで見届けよう」と決めていたので、そこからも薄ミュは見続けていました。毛利さんはこういう引きずったファンに対してのアフターケアをとても丁寧にやってくださる演出家だと思っています。

新しい流れについてこれない者は切り捨てられるような舞台も多い中、黎明録の山崎の言葉に救われたファンは決して私だけではないはずです。初期のメンバーが好きだと言いたい。でも薄ミュも見届けたい。そうやってフラフラと観ていたのに、「好きなままでも良い。伝えていけばいい。今を見てくれるならそれでいい。誠は繋がっている」と毛利さんから言われたように感じました。自分が好きだったのは薄ミュではなく、矢崎広土方歳三のみだったのかもしれない。そう思うと観に行くのがすごくつらくて、演者にも申し訳なかったのに、とても楽になりました。好きなままでもいいんだ、と思えて。

人というのは不思議なもので、「これを受け入れろ!」と言われると全力拒否したくなるけど、「過去を好きなままでもいいから、これからも観てね」と言われると今のメンバーの良いところが見えるようになり、受け入れられるようになってくるんです。メンバーは全然違うけれど、彼らの中に初期から決して消えない熱いものは流れている。そのことに気付けるようになってきました。

今、全てをフラットにして薄ミュシリーズでどの作品が1番好きかと言われると、黎明録か風間篇だと思います。

 

矢崎さんがいなくなったあと、薄ミュに対しての熱は確かに少なくなりましたが、それでも楽しく観れるようになったのは、黎明録のおかげです。毛利さんのおかげです。私はこの作品自体を好きでいたかったので、本当にありがたかったです。

 

矢崎さんに対しての熱は冷めることなく続いていました。それは矢崎土方への気持ちは矢崎さんへの気持ちと全く違うところにあったからかもしれません。ベクトルが別というか。矢崎さんは「応援したい」という気持ちが強いんですが、土方さんには「支えられている」と思うんです。土方さんをやっていない間も矢崎さんの演技は大好きで、矢崎さんのことも大好きでした。

ただ、もう副長が見れないことは心残りとして、古傷としてたまに心の中で疼いていました。

 

そんな中、薄ミュLIVEが発表されました。2回目の薄ミュLIVE。「東くんの左之がとても人気なのに、ここにきて左之篇ではなくLIVE…?」とは思いましたが、とりあえず行くことは決めていました。

そして、ゲスト発表で矢崎広の名前を見つけ、もう絶対この日は行こうと決意を固めました。

2年間幽霊のように矢崎土方に取り憑かれていた私が、さよならをできる日はここしかないと思ったのです。

 

チケットを無事に手に入れた私に公演前日に「トークゲストとしての登壇」と発表がありました。

トークゲスト…?演じないってこと…?」という絶望の中、日は着々と迫っていて、他の日のゲストのトークレポを読むたび、ハードルを下げ続ける日々でした。

「演じなくてもいい。歌わなくても、殺陣がなくても。薄ミュについて、土方さんについて話してくれる矢崎さんが観れるならそれでいい」

と、心に決めて、それでも楽しみすぎた当日。

 

フォロワーさんから、5列目センターとかいうとんでもない席をお譲りいただき、LIVE自体をとても楽しく観ていました。黎明録メドレーで泣いていたところで、トークゲストの登壇に。登場した瞬間「ヤイサー!!」と叫ぶ矢崎さん、いえ、土方さん!!!!!!!

目の前にいたのは紛れもなく土方さんでした。この2年、土方さんっぽい声を出していた役もあったのですが、全然違いました。2年ぶりに聴いた土方さんの声でした。矢崎さんの可愛らしい話し方から突然現れる土方さん。

ダイジェストを懐かしそうに見ながら、毛利さんから「それじゃあ、一曲お願いします」と言われてすんなり歌う矢崎さん。

「いいか、逃げるなよ」から始まる歌。

え、は、冷厳な瞳!?セリフ付き!?!?

私の脳内は大パニックでした。今目の前で行われている光景が夢を見ているのかと思いました。とりあえず引きつけを起こすくらい泣いていました。5列目で。

矢崎さんの目線がぼんやり自分の辺りを見ている(ような気がする)中、大号泣です。途中で刃を向けるように手を出していて、その目線はまさに土方歳三でした。厳しさと優しさを兼ね備えた土方歳三の目でした。

そのまま毛利さんから、「台詞ききたいなあ」ってリクエストがあり、

「自分の心の中に思うところがあって、譲れないものがあるなら真っ直ぐに前を見ていろ。なすべきことから目をそらすな。」

「斬られてえ奴は前に出てこい」

を言っていただきました…!

そこから、薄ミュが懐かしいという話になり、C&Rをしていたら松田副長の登場!!!

副長が2人!!!!!なんか死ぬほど叫んだのを覚えています。

近藤さんからどっちが本当のトシ?みたいな流れになってビーチバレー対決。

「決して後退はしねえ」と言う矢崎副長。

今を生きる松田副長に花を持たせるかと思いきや、めっちゃしっかりバレーをして完全勝利をきめる矢崎副長。

お盆になって還ってきた矢崎土方は思っていたよりとんでもなく元気でした。

ソワレはこれに加えてビーチバレーの台詞が

「必ず勝ってみせる。信じて待ってろ」

でしたし、もうなんかノリノリで元気すぎて2年間矢崎さんの中で元気に生きていたことがありありと分かりました。

ソワレで「まあまあだな」と松田副長を認め、拳を突き合わせて誠を引き継いだところで、「ああ、もう満たされました」と完全敗北でした。

私は結局毛利さんの演出に逆らえないし、矢崎さんの演技に惹かれるしかない。

 

さよならできました。

 

矢崎さんの中で土方さんは元気に生きていること、矢崎さんが土方歳三を未だ大好きなこと、たまに矢崎さんの中に土方さんが垣間見えること、本当は気づいていたのに見ないフリをしていました。

今の薄ミュのメンバーがしっかり初代からのバトンを受け取っていること、そして私自身が今のメンバーもとても好きになっていること、このことにも気づいていたのに見えないフリをしていました。

 

本当は分かっていたし気づいていたのに、昇華できなかった思いが邪魔をして、見えなくなっていました。

これでもかというほどに見せてくれて、会わせてくれて、確かに姿形は矢崎さんなんですが、そこに紛れもなく土方さんがいて。

こんなに長い時間勝手に待っていたのに、その期待に矢崎さんが120%で応えてくれました。

感謝しかないです。彼の薄ミュへの想いは本当に熱くて、私なんかより全然強かったです。

お別れをさせてくれてありがとうございました。

もう二度と会えないかもしれないけど、私未練はないです。

また観れるならとても嬉しいし、絶対に行きますが、もう執着はしなくても生きていけそうです。

それでも、私の中で大切なひとで、矢崎さんの役で1番好きです。別次元で別の存在として好きです。

一生とは言えないけど、また矢崎さんの役でこれ以上好きな役に出逢えるかもしれないけど、今のところずっと好きだと思います。

矢崎さんは自分たちのことをよく「紛い物」として新選組になぞらえてお話されたりします。でも、薄ミュから薄桜鬼に入ってゲームやアニメをプレイした私にとって、誠なのは矢崎さんの土方歳三です。初期の薄ミュキャスト達です。千鶴が新選組を誠の武士と思ったように、私にとって誠の土方歳三矢崎広でした。

本当に本当にありがとうございました。

 

私はこれからも薄ミュを見続けるだろうし、見続ける限り、これからも悲しいこともあると思います。もうその片鱗も見えていますし。それでも、これからも見続けたいと思います。

松田のがっくんには重くて重くて重過ぎるバトンを受け取ってもらっていますが、彼なら伝説の向こう側へ行けるポテンシャルがあると思っています。

黎明録を経た土方歳三を突き進んで貪欲に上を目指して演じてほしいです。

 

矢崎さんを追いかける限り、彼の中に生きる土方さんをちょっとだけ垣間見れます。それは彼の精神性とリンクするところがあるからかなあ、と思っています。今のところ、このことを大事にありがたく、生きていこうと思います。

日本版ジャージー・ボーイズ初演

私は歴史的な初演に立ち会ったのかもしれないと思えた公演でした。

2月のPV撮影、いや10月のキャスト全発表からずっとそわそわしていた公演。私の中で2016年の目玉とも言える公演でした。アッキーの発表の時には、藤岡さんは選ばれそうだから1回くらいは行きたいな〜♪と軽く考えていましたが、結局RED5回White1回行きました。

だって矢崎広が選ばれてしまったんだもの。今年の夏も中屋敷さんと濃厚にお芝居すると思っていたところにまさかのミュージカル。そしてミュージカルの申し子海宝直人とのWキャスト。

発表された瞬間1日中お腹痛くて、仕事中ぼーっとしていたのを覚えています。

私は盲目ファンなので、「矢崎さん最高!天才!大好き」botなんですけど、それでもミュージカルファンの耳の肥えた皆様に海宝せんぱいと比較されるのは本当に胃痛が止まらなかったです。

…とりあえずその話は置いといてJBの話に戻します。

2月にPV撮影。見事に多動性を発揮しずっとジャンプをしている気持ち悪い自分と素晴らしきエキストラの皆様と赤フォーシーズンズたちの楽しいVTRが公開されてから、あっという間に7月がきました。

毎月ジャージーニュースとか、インタビューとかWOWOWさんとかあって、本当にあっという間でした。

予習をしようか迷っていて、結局何も観ないで行きました。

矢崎さんもたいがいあれですが、私も「初めて観るボブは矢崎さんがいい…!」と考えちゃうタイプなので(笑)

まあ、結局観ても全然大丈夫なくらいベクトルの違うボブだったんですが!

赤と白、明らかに赤の方が見てるので、どうしても情が入ってるのは赤なんですが、どっちもとても良かったです。好みで分かれそうな感じです。

ドロドロのストプレが好きな方は赤、爽やかにミュージカルが好きな方は白が好きなんじゃないかと、勝手に思っています笑

同じ台詞、同じ曲、3人以外キャストも同じなのにこうも違うお芝居になるのかと、改めて芝居の面白さに気付けた舞台でした。

フランキーは同じ中川さんなのに、そのフランキーさえも赤と白で変わって見える。人は誰かとの出会いで形成されるって本当だなあ、と。誰かが変わるだけでキャラクターを変えられる中川さんの柔軟性にも驚きでした。

ただ、どちらでもカテコが死ぬほど楽しかった。まるでフォーシーズンズのファンになったような感覚で、嬉しくて泣きながら楽しく踊れる舞台なんて滅多にあるもんじゃありません。再演決まったので、お祭舞台好きな方は是非に行ってください。こんな楽しい舞台がこれからも続いていくことがとても嬉しいです。

【あらすじ】

ニュージャージー州の貧しい片田舎で、彼らは出逢った。

「天使の歌声」と称されるフランキー(中川晃教)は、兄貴分のように慕う

トミー(藤岡正明/中河内雅貴)とニック(福井晶一/吉原光夫)の

グループのボーカルに迎え入れられる。

作曲の才能があるボブ(海宝直人/矢崎 広)の加入をきっかけに、

彼らはザ・フォー・シーズンズとしての活動をスタートする。

金もコネもない彼らを待ち受けていたのは、過酷な下積み生活。

そして、「シェリー(Sherry)」のヒットを皮切りに、「恋のヤセがまん(Big Girls Don't Cry)」、

「恋のハリキリ・ボーイ(Walk Like a Man)」など全米ナンバー1の曲を次々に生みだしていく。

だが、その裏では莫大な借金や家族との不仲、グループ内での確執、

様々な問題がザ・フォー・シーズンズを引き裂いて・・・。

成功の光、挫折の影、その先に彼らが見たものとは――。

【White】

1度しか観ていない白ですが、中河内トミーが引っ掻き回したフォーシーズンズでした。とっても良いスパイスだったなあ。トミーめっちゃ良い子なんですよ。頭弱いだけなんですよ。「ボビーむかつくよね、うんうん」って観てました。

優しさの塊でお父さんみたいだった福井ニック。若い2人のために身を引いたように思えたけど、実は劣等感が…!っていう驚きがありました。

そしてパーフェクトボーイ海宝ボブ。正直私のイメージしていたボブはこっちです(笑)

cry for meでの説得力が凄すぎました。これは才能あるわ、ってお客さんまで全員が納得するボビー。フランキーのこと以外は全員どうでも良くて、クールだけどちょっと愛嬌もある。最後の「僕がいなければ」を小声で言うところも可愛かったー!

白はハーモニーもとっても素晴らしくて、常にフランキーが1番聞こえていた気がします。そしてフランキーがフォーシーズンズのメンバー一人一人を大好きだったのがとても良く伝わりました。フランキーのフォーシーズンズ内でのポジションの移り変わりや、心情の変化が分かりやすい白。大千秋楽で観てしまったので、もっと早くに観ておけば良かったなー、とちょっと後悔しました。

【RED】

そして、マグマのようにドロドロで熱かった赤。

長くなります。ご了承ください。

まず、中河内トミーより圧倒的に悪いやつだった藤岡トミー。藤岡さんのトミーはまるで劣等感の塊で、でも優しさの塊でもありました。フランキーを見つけた時の表情が言葉に出来ないほど素敵で!「こいつを育てたい!」という純粋な気持ちと、「こいつには勝てない」という劣等感を常にフランキーに抱いていた気がします。ボブのことも認めていて、本当はその凄さを理解しているけれど、常にフランキーから認められているため、つい上からものを言っちゃう感じがしました。

トミーの中には常に「フランキーの上にいたい、中心にいたい」という気持ちがあり、それがどうにも上手くいかず空回りしていた感じがありました。

そのトミーの弱さが本当に好きで、悲しかったです。

吉原ニックは、超セクシーでした!!

気遣いできて、色気があって。

stayの時の泣きそうな顔が印象的です。

フランキーを育て、ボブの親友で、トミーの世話をし続けて。自分のことは後回しでいつも誰かのことを見守るニックが限界を迎えることに、すごく納得がいきました。劣等感もずっと見えていて、最後の告白も「知ってたよ」と言いたくなる感じ。

私が誰よりも共感していたのは吉原ニックでした。

観客への寄り添い方が上手な方だと思います。

そして、矢崎ボブ。思い描いていたボブとはちょっと(かなり?)違い、愛嬌がある面白いボブ。フランキーのことが大好きで仕方なくて、フランキーがいたおかげで成功した一発屋の天才。彼の才能は歌ではなくて、自分とフランキーを信じること。それに尽きた気がします。そしてそれがトミーとニックを傷つけている。

トミーのこともニックのことも好きで、だけどフランキーを押し上げることに夢中だったから気付けなかった。2人がいなくなった後フランキーのいないところで少しその気持ちが見えるのが好きでした。私の深読みかもしれませんが(笑)

「君の瞳に〜」のリリースも、ヒットするためというよりフランキーのための方が強かった気がします。フランキーがホーン入れたがっていたから、それが映える曲でヒットさせたかった。そういう人間くさいボブが好きでした。

December'63は「イヨッさすがプロDT!」と声かけたくなる仕上がり(笑)お兄さん達がイジメてくれて良かったねえ。私は矢崎さんめっちゃエロいと思ってるので、そろそろDTぽくない役柄も見たいです。わがままです。

私は大好きなボブで、さすが矢崎さん演技力やばいとか思っていましたが(盲目なので^_^;)、あまりにイメージから逸脱しているので他のお客様にはどう映るんだろうと思っていたら、意外と受け入れられていて嬉しかったです。

海宝センパイが正統派だったので、あえて変えてきたのか、レッドチームが本人に近いところで演じていたので合わせたのか分かりませんが、本当にゼロから作り上げた感じがして面白いと感じました。

歌声もかなり成長していて、本人の言う「ヒリヒリするようなスリリングな道」をこれからも突き進んでいただければと思います。

全体的にハーモニーというより圧がすごかった赤チーム。藤岡さん吉原さんの声の厚みによってもう感動レベルが鳥肌もので。最初はすごすぎてわけわかんなかったんですが、段々このハーモニーで鳥肌立つのが好きになりました。

赤の一人一人の弱さや狡さが透けて見えるのがとても好きで。人間ドラマが濃く描かれていて、それぞれの心情を読み取ろうと必死でした。赤のメンバーはフランキーのことが大好きで、彼らの心の中心には常にフランキーがいました。赤のフランキーは特にニックに、思い入れが強かったように見えました。

もう話すまでもないですが、フランキーの中川あっきーがとにかく凄くて!シルエットの第一声でみんなトミーの気持ちになれる。本当に素晴らしい声でした。そして少年から大人までを自然な流れで演じる演技力。赤と白で自分の役を変えられる柔軟性。何より最後まで全く不安にならない歌唱力。バケモノかなって思いました。

中川さんの中川さんによる中川さんのための舞台。

だけど、彼はあくまで全員の舞台にしようとしていて、それがすごくフランキーと似ているような気がします。凄いもの観たなあ、と思います。再演は誰が決まってなくても中川さんだけは決まっているでしょう。そう感じるくらい圧倒的に彼の舞台でした。

他にももっくんクルーが素晴らしかったとか、新太くんにハマりそうとか、まりゑ姐さんフランシーヌ好きとか色々言いたいことはありますが、纏まらないのでこの辺で。カンパニー全体が愛しくなってしまいました。

ちょっと前まで某アイドルグループを追っかけていた身としては、この物語はファンタジーでした。

ファンというのはただ彼等の人生を見守ることしかできない。彼等の人生の選択が自分にとって喜ばしいことではなくなるたび、無力さを痛感してしまいます。でも力を合わせればステージ上に再び引っ張り出すことができるかもしれない。

無力な私にもおじいちゃんまで見守っていれば奇跡が起きるのかもしれない。

今日の国民的グループの一大事を見ながら、ジャージーボーイズのRag dollがぐるぐると頭の中を巡っていました。

朗読劇私の頭の中の消しゴム(矢崎広×三倉茉奈回)

朗読劇はあまり得意ではない私が唯一毎年通っている朗読劇、私の頭の中の消しゴム

こちらに矢崎広さんが満を持して登場されるということで、4/29、5/3どちらも観劇してきました。

 

満を持して…というのも毎年アンケートに矢崎さんのお名前を書き、嵐が丘(去年の消しゴム時期)やらしっぽのなかまたち(消しゴムと同じ岡本貴也さん演出)やらでだったかと思いますが、矢崎さんへのお手紙でもしつこく浩介をやって欲しいと書き、ぴろくらのお友達(主に真紀様)にも何時間も浩介と矢崎広がどんなに嵌っているかということを語っていて、正直なところ呆れられて逆にもうやっていただけないのではないかと思っていました。

今年念願叶ったので本当に有難い限りです。

どうしてこの作品を演って欲しかったかというと、今迄の矢崎さんであまり例のないコテコテの恋愛ものだということ、そして何より浩介という役柄が矢崎さんにぴったりだったからです。

 

私の頭の中の消しゴム」という作品は、一見若年性アルツハイマーを中心とした話に思われがちですが、確かにそれは重大なエピソードですが、浩介と薫という2人の生き様のエピソードのひとつにしかすぎず、ベースに浩介が薫によって成長する過程が描かれていると思っています。

私自身がそんな浩介という役が大好きで、矢崎さんがどう演じるのか楽しみだったというのもあります。

 

 

 

 

ご覧の通り、決まる一年も前から私の期待は多大なものでした。矢崎さんならこうするだろう…みたいなことが自分の中で決まりすぎていて、それが逆に恐い部分でもありました。

自分の理想を具現化させたくて矢崎広という役者を使っているだけなのかもしれなくて、もし違った時に私の中で矢崎さんの評価を下げる、そういうことはしたくなかったので。

でも実際、期待通り?、期待を超えて?素晴らしい浩介が見れました。

自分が思っていたところと違う部分、ありました。でもそれは、私の読み方が甘かったり、その後に繋がる解釈だったり。

語弊を恐れずに言うと、初めて、浩介と会えた気がします。

朗読劇だから別に完璧に姿形が一致していなくても良いんです。イメージが違っても面白いんです。声が大事ですし。朗読ですし。

だけど私はずっと浩介に会いたかった。2年間色んな人の口から語られる浩介に会ってみたかった。

無愛想で背中が広くて髭が生えてて薫のタイプではない浩介。私にとってそれは矢崎広が演じる高原浩介で、うまく言えないんですが、朗読ではなく、姿形で、実物で、高原浩介を見てみたかったのだと思います。

矢崎さんならきっと、朗読の枠を超えて浩介を連れて来てくれる気がしていたのだと思います。

矢崎広の浩介はぶっきらぼうで荒っぽくてどこまでも優しく、孤独だった。

薫に導かれながら、一歩ずつ踏み出し、成長していく1人の男性だった。

嵌るだろうとは思っていましたが、本人の資質と本当にぴたりと嵌っていました。

 

そして欠かせないのは三倉茉奈さんの薫。

浩介に比べると薫はどうしても軽視してしまっていた傾向にあったのですが、三倉さんの薫は薫そのものでした。

優しくて包容力があって浩介のことが大好きな薫。

孤独感の強い矢崎浩介と温かく包み込むような三倉薫は親和性が高く、お互いがお互いを唯一無二の存在と思っている印象を強く受けました。

矢崎さんは声優もやられてますが、やっぱりベースは俳優だと思うので、できれば女優さんで…とは思っていたのですが、茉奈さんが素晴らしすぎて、理想の浩介と薫だと思いました。

 

この2人を組ませてくれたことに感謝ですし、素晴らしい演技を観れたことにも感謝です。

スタオベできて良かった。

一場面一場面が胸に刻みこまれています。

 

私はこれからも公演があるかぎりこの朗読劇に通いますし、たくさんの浩介と薫を観ると思います。

だけど、二人の浩介と薫は絶対消えない。

いつかまた、逢えますように。

 

本当にありがとうございました。

Eternal CHIKAMATSU

エターナルチカマツ、現代と過去が交錯し、蜆川の渦に巻き込まれたような作品でした。

ほんのちょっと、15分だけの恋のはずだった。

止むに止まれぬ事情から、売春婦になったハル。割り切って始めた商売だが、 足繁く通うジロウ(妻子持ち・現在失業中)と命懸けの恋に落ちる。周囲の反対を押し切ってこの恋を全うすることが出来ないと諦め、ハルはジロウに愛想尽かしをしたふりをして心ならずもジロウと別れる。自暴自棄になって街をさまよっていたハルは、かつて遊女の涙で溢れたという蜆川(曽根崎川)のあった場所で、ハルと同じ境遇にある、妻も子供もいる紙屋治兵衛と命懸けの恋をしている遊女小春と出会い、近松門左衛門の江戸の世界、古い古い恋の物語に引きこまれていく。

以下感想

15分の恋ってそれなんですね、っていうくらいに意外とエグかった序盤。

深津さん演じるハルは売春婦で身を切るような生活をしている。そのウリの最短時間が15分。どうしても古典が結びつくと高尚な印象を持ってしまうんですが、思い起こせば源氏物語だってカルミナ・ブラーナだってジャンルは違えど昔のものってセクシャルなものが今よりずっとあっぴろげな気がする。

それを現代でもやってみたんでしょうか…?美しい深津さん演じるハルの口から語られる生々しく絶望的な現実が重すぎて最初から泣いてました。

返しきれない亡き夫の借金、愛していたジロウとの別れ。自殺しようとするハルの後ろから現れる小春は幻想的で怖くて美しかった。

観ている方も地に足着いたリアルなお芝居から、不思議な空間に飲み込まれていきます。

七之助さん演じる小春が思いっきり歌舞伎だったからかもしれません。

歌舞伎を異空間としてリアルなお芝居に放り込んだことでファンタジーにすんなりと入り込めました。

小春は喋り方は歌舞伎の声の出し方なんだけど、話してることはとっても分かりやすかったので、まるでホンヤクコンニャクを食べたような感覚でした。いや、歌舞伎でも何話してるのか分かりますけどね。より噛み砕いた言葉になっていたので。

そこから、忙しい人のための心中天網島といえばいいのか、河庄と最後の心中の場面を上演します。

小春は心中してから今日まで107882回、毎日心中天網島を上演している。それを観て喜ぶ観客、真似する恋人たち。初めは心中に同意していたハルだったけれども、徐々にそれはおかしいと感じ始める。

作者の近松門左衛門らしき人物とともにハルの心中を止めようと画策し始めます。

この話のテーマに「心中ダメ絶対」っていうのも含まれていると私は解釈しているのですが、自分自身不倫とか心中とか当人同士の問題だし放っておけばいいのに、っていう考えなので、ここでハルから「心中観て楽しむ観客は悪趣味だ!」と糾弾されるのはちょっと解せなかったです(笑)

受け取り方が捻くれているだけなのかもしれませんが。

こういうので真似して心中とかしちゃう人はどこかでこじつけて同じようなことするから!近松気にすんな!くらいに思ってました。

愛の形というのは人それぞれの正解があって、小春とジロウの決断もおさんを悲しませるけれども、それはそれで良いんじゃないかな、というのは今も思っていますが、ハルは単純に小春のことが好きになったから、今日くらいは心中しなくてもいいじゃない、と声をかけます。

生きてみても良いんじゃないかな、と。

そんな素直なハルだから、小春の心中を止められたのかなとも思います。

そして小春はずっと蜆川でハルを見守っていた亡き夫。小春を通して人生を歩む方向へ導かせていました。

小春の頑固なところも何も言わず黙って決めてしまうところも、優しいところも思い返せば全部夫に通じていたわけです。

全部アンタの所為なのに何言ってんの!と思ったのは全部観終わって余韻が醒めてからのこと。

観ている間はあの世界に入り込んじゃうので、スッキリと泣き、スッキリと笑顔で見終えました。

何も解決していないのに、とても明るい気持ちで終われるところは、サ・ビ・タを思い出しました。

物語としてはぐるぐる考えてしまいますが、人生なんて結局気の持ちようなのかもしれないですね。

深津さんの舞台でのお芝居、七之助さんの小春(海老反り!)、伊藤歩さんという素敵な女優さんを観れて、矢崎さんにこの舞台に連れてきてもらえて良かったなあと思います。

できればもっと印象に残る役ならなお嬉しかったですが…!いや、私の印象には残ってますが、矢崎さんを知らない人たちにはどうなのかなあと思って。

最近素敵な役どころが多かったので、今回はちょっと消化不良でしたが、こんな素敵な作品に呼ばれる俳優さんになっているということに、ファンとしては嬉しい気持ちももちろんあるので、また七之助さんらとガッツリ対峙するような役を見れたら幸せです。

ルヴォーの演出はスタイリッシュで、集中を切らさない仕組みで、濃厚な時間でした。

ちょっと昨年6月の四谷怪談を思い起こさせました。あれも好きな演出だった。

古典をスタイリッシュにされると無条件にかっこいい!って思えるタイプなので、こういう演劇がもっと続いていくと嬉しいです。

できれば次は歌舞伎入門編からもうひとつ入ったところまで観れたら、もう少し解釈を観客に委ねてくれる余白のあるものが観れたら嬉しいなあと個人的には思います。

Endless SHOCK

鉄は熱いうちに打て。

興奮は冷めぬうちに書け。

ということで、この土日も観劇が続くので、上書きする前に書いちゃおうと思います。

Endless SHOCK

日本一チケットが取れない舞台

階段落ち

フライング

観劇する前のSHOCKのイメージといえばこの辺りでした。

主にメディアによるパブリックイメージをそのまま植え付けられたのだと思いますが、個人的にこの宣伝は非常にナンセンスだと思います。

SHOCKの魅力はそこじゃなかった。

素晴らしいセット

素晴らしい演出

素晴らしいストーリー

そして素晴らしい出演者たち

そのどれもが非常にバランスが良く、レベルが高い、とても上質なエンターテインメントでした。

ジャニーズの舞台は、ショーとしてのクオリティは高いのですが、ストーリーは粗いものが多く、SHOCKに関しても特に期待をせずに行ったのですが、このストーリーがめちゃくちゃ良い!

絶対的なカリスマ性を持つコウイチと二番手に甘んじるライバルのヤラ。コウイチに想いを寄せるリカ。主にこの3人が主体となりストーリーが展開します。

特に驚くような展開はなく、読めます。きっとこうなんだろうなっていう展開をそのままなぞります。

ただ、それがあまりにも本人たちに重なるため、その熱量と主軸のshow must go on精神にわんわん泣かされてしまいました。

1幕はコウイチのサクセスストーリー。ワンマンだけど、みんなを惹きつけるコウイチに私たち観客も惹きつけられます。劇中劇のショーはTDSのBBBさながら。大勢のアンサンブルを従えてセンターに君臨するコウイチはミッキーのようでした…!

コウイチは絶対的な王者。カリスマでした。

この有無を言わさない説得力がSHOCKの凄さなんだと思います。

二幕からはライバルのヤラに焦点が合うように作られていました。

幼い頃からコウイチにライバル心を燃やし、コウイチを憎み、でも誰よりコウイチの凄さを知っていて、尊敬していて、挫折を繰り返している人物だということが、二幕で痛いほど伝わってきます。

コウイチが序盤でやりたがっていた、シェイクスピアハムレットとリチャード3世でヤラの心情を表す演出はお見事。

個人的にジャニオタで屋良っちの凄さを知らない人はにわかだと思っているので笑

屋良くんのライバルを観れて本当に良かったなあ、と思っています。

彼はどこまでも光一さんと対等であろうとしているし、身体能力の高さとセンスの良さ、魅せ方の上手さはやっぱり凄まじいんですよね。引けを取らないというか。もちろん、光一くんが輝いている舞台なんですが、「この人はこの人でコウイチの陰を追わなければ素晴らしいエンターティナーなんじゃないか」と観客が思うライバルなんですよ。この2人が切磋琢磨してショーを良くしているというリアリティ!!!

この不思議なリアリティーがより深い感動に起因していると思います。

エンターテインメントの裏側を見せつつ、最高のショーを展開するという構成がそもそもどストライクでした。

ショーの演出もとにっかく素晴らしくて!ブロードウェイの群舞もまわり盆を使った殺陣も、桜吹雪の中の桜の木も、今まで観た演出のなかで最上級のものでした。

階段落ちも生で観る迫力は凄かった…!思わず叫びそうになりました。その前に階段の横に背中から落ちるジュニアも凄かった…。

自分の脳内でしか叶えられないと思っていたセットが目の前にあって、むしろ想像を超えていて、自分の舞台に対しての価値観をグラグラに揺さぶられました。

世界のどこで上演しても恥ずかしくない作品だと思います。日本で作るミュージカルに限界を感じている部分があったのですが、これは凄かった…。

1400回を超える上演回数の意味が分かりました。生で観ないとこの感動は味わえないと思います。堂本光一…同じ人間とは思えなかった。こんなに全力で挑んでいると思ってなかった。1400回、毎回彼は全力で舞台上で人生を全うしているんでしょうか。尊敬します。

素晴らしい作品にも関わらずとてもクローズドな評価を受けていると思います。

もっと幅広い人が観ることのできるエンターテインメントになるといいんですが…!

チケット競争を乗り越える価値のある舞台だと思うので、気になった方は是非!!!

shockめちゃくちゃ楽しかったーー!!!ワンピース歌舞伎も観たいよー!!!

エンタメ好きの叫びでした。